2021 Fiscal Year Research-status Report
現象的空間の設計手法に関する基礎理論構築:イサム・ノグチ制作論の応用研究
Project/Area Number |
21K04461
|
Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
熊澤 栄二 石川工業高等専門学校, 建築学科, 教授 (30321425)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 友里子 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (50814860)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 自然 / 機構 / 技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、主要設備機器である三次元スキャナーLaica BKL360の導入と機器の動作確認、および使用環境の構築を行った。コロナ禍で県外での調査活動ができなかったが、建築学会特別研究委員会(「人為的要因による自然災害の防止に向けた技術・社会に関する特別研究委員会」令和2年4月~令和4年3月)にて、近代における技術の諸特性を明らかにした。近代における制作理論を解明するためにも、第一論文である「防災のethnos-その地平の探求」では、「技術とその技術を動機づける力」との関係を根本問題として捉え、二つの論点から考察を行った。特に前半では現代技術の本質「欠如」を見据え、欠如から技術が発動する場面を社会情勢から観測した。 この現代技術の発生するethnosの地平とは「技術における自然支配の基礎」をなす主体性としての自我の確立にその起源を論じた。自我―すなわち方法論として、また厳格に客体と区別することにより生起した主体としての自我の確立は、反って技術による支配に対する必然性―あるいは地平を成していることを明らかにした。言い換えるならば人間が自我として確立することを通して、自然全体をある「メカニズム」として表象する地盤を獲得した歴史を、R.デカルト以降の主体性の確立の歴史から論じた。特に18世紀以降の技術についての歴史的な展開は、E.カントとその同世代人であるフランス古典主義建築の大家であるA. Ch.カトルメール・ド・カンシーの論考を比較することで明らかにした。18世紀には「自然を機構として把握する視点」が酷似していることを指摘した。 特に、令和3年度は、イサム・ノグチが確立したランドスケープ芸術の革新性を明らかにするため、西洋における近代技術理念の確立について論じた。この自然をメカニズムとして把握する近代技術世界観の把握は、ノグチの芸術観とその理論を論じるための基礎理論となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要設備品である三次元スキャナーの購入などは順調に行えたが、本設備を用いたプレ調査地である香川県の牟礼にある「イサム・ノグチ庭園美術館」へ調査に行くことが出来なかった。 実際に令和3年度、石川県では5月16日から翌月6月16日、8月2日から9月30日、翌年の1月27日~3月21日までまん延防止等重点措置期間となり、長期休みを活用した調査を組むことが出来なかった。またまん延防止等重点措置期間が解除されたのちも、学校内規により、学外での研究活動に大きな制約がかかったこともその理由となる。学生の調査協力を前提に立案していたが、悉く中止となった。 また、研究分担者である今村講師(舞鶴高専)も、病気による長期療養となり、イサム・ノグチの制作論研究に着手することができなかった。しかし、「研究実績の概要」にも記した様に、文献調査等によりイサム・ノグチの景観制作の特異性を明らかにする基礎研究を推進することはできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、前年度未実行になった国内でのプレ調査を実行することで、点群データの補正方法のルーティンの確立を目指す。またベクトルデータ化したイサム・ノグチの作品を用いたシークエンス分析の検討を行う。 基礎研究である「制作思想研究」については、令和4年内にBilly Rose Sculpture Gardenの文献調査を整理し、日本建築学会計画系論文集に投稿予定である。加えて、年度内に調査によって得られたデータおよびその分析結果については令和5年度の建築学会北陸支部および全国大会にて公開する予定である。 研究計画ではthe Noguchi museumにて文献収集を令和4年度から開始する予定であるが、コロナの状況を考慮して決定を行いたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、国内プレ調査が実施できず、旅費、人件費・謝金に残額が発生した。令和3年度未実施の調査分については、令和4年度に実施しする予定である。
|