2023 Fiscal Year Research-status Report
ニューヨーク近代美術館の建築・デザインコレクションの形成プロセスと評価
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21K04469
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 泰寛 京都工芸繊維大学, 未来デザイン・工学機構, 教授 (50795010)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 建築展 / デザイン展 / ニューヨーク近代美術館 / コレクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界有数のデザインコレクションを擁するニューヨーク近代美術館(MoMA)のアーカイブを対象にし、コレクションの形成過程における日本人建築家やデザイナーの収蔵作品の傾向と動向を検討するものである。昨年度までは、1957年に初めてコレクション展として実施された「20世紀のデザイン展」に出展された作品をリストアップし、その収蔵プロセスを検討した。 本年度はMoMAの既存のコレクションリストを整理することと、文献調査を行った。結果としてMoMAの建築・デザイン部門が管轄する作品のコレクションは、建築分野とデザイン分野で形成のプロセスが異なることが明らかになった。デザインコレクションはデザイン部門が設立された1930年代からコレクションが始まったが、建築に関するコレクションの歴史は1960年代を待たなければならなかった。これは、デザイン部門に建築部門が足されて現在の体制に落ち着くまでに変遷した、館内における同部門の位置づけが関連していると考えられる。 また、建築のコレクションが事実上1960年代と遅れて始まったことから、その要因を検討する必要があることもわかった。物として扱いやすいデザイン分野の作品に比べて、建築において収蔵に値する対象など、建築物を離れた副産物であるドローイングなどの扱いが定まらなかったことなどが考えられる。また1960年代は、50年代に続いた日本やラテンアメリカに関する建築展を経て、再びアメリカの建築に目が向けられた時期である。特にミース・ファン・デル・ローエの死の3年前に開かれた建築展のプレスリリースにミュージアムコレクションからの展示であることが示されていることから、この時期に建築のコレクションを手探りで始めたことが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍後の現地視察に踏み切れなかったため、当初想定していた調査スケジュールから遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
MoMAが世界有数の建築作品のコレクションを有するに至った契機として、ミース・ファン・デル・ローエのコレクションを始めたことが推察される。そのため、コレクションの全貌を明らかにすると同時に、ミースコレクションの形成プロセスに絞った研究を進めていく。特に、ミース生誕100年を記念して実施された1986年のミース展では、同年にバルセロナ・パビリオンの復元がなったことから、同館のコレクションが保存再生に活用された可能性がある。そこで、早々に現地調査を実施し、コレクション形成のプロセスにとどまらず、その意義の検討に着手できるように研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
予定していた海外調査が実施できなかったため、主に旅費での使用額が発生している。2024年度早々にニューヨーク近代美術館での調査を予定しており、適正な執行に努める。
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