2021 Fiscal Year Research-status Report
「生活最小限住居」の歴史的位置づけと国際的影響関係の解明
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21K04471
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
海老澤 模奈人 東京工芸大学, 工学部, 教授 (40410039)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生活最小限住居 / 近代建築国際会議(CIAM) / 近代建築史 / ドイツ / 集合住宅 / 住宅史 / ジードルンク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1929年にドイツのフランクフルト・アム・マインで開催された第2回近代建築国際会議(CIAM)において近代建築家たちが取り組んだ「生活最小限住居」を題材に、以下の3つのテーマに取り組むものである。 (1).「生活最小限住居」に関する歴史的資料を調査・分析し、この会議と展覧会の実態について新たな史実を提示すること (2).「生活最小限住居」を糸口に同時代の住宅計画に関する国際的な影響関係の一面を明らかにすること (3).「生活最小限住居」を20世紀の住宅計画の展開の中で捉え、この会議の歴史的位置づけを再検討すること 初年度である令和3年度においては、基本的な資料を収集し、上記テーマの(1)と(2)について調査・考察を進める予定であった。しかし1年間を通して新型コロナウィルス感染症の影響が持続したため、海外渡航の実施が難しく、当初資料収集のために予定していたドイツなどでの調査を断念せざるをえなかった。代わりに日本国内での建築雑誌記事等の資料の収集を進め、主に同時代の日本とCIAM「生活最小限住居」の関係について、テーマ(2)を進めることができた。その成果の一部を令和4年9月の日本建築学会大会で口頭発表する予定である(投稿済み)。 本研究テーマと関連する令和3年度の具体的な成果としては、ヴァイマール期ドイツのジードルンク(住宅団地)や集合住宅に関する学術論文、口頭発表、シンポジウム講演などがある。また、日本の戦後初期の住宅団地に関する論文の執筆と口頭発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度を通して新型コロナウィルス感染症の影響が継続し、海外渡航が制限されていたため、当初予定していた海外(ドイツ他)での調査活動が実施できなかった。その一方で日本において入手できる資料の収集を進め、「「生活最小限住居」の国際的な影響関係の考察」という2つ目のテーマに関しては、日本との関係に限って研究を進めることができた。そのため、当初予定していた研究計画を十分には遂行できなかったものの、部分的に研究を進展させることができた状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度も引き続き、「(1)生活最小限住居の実態の解明」と「(2)生活最小限住居の国際的な影響関係の考察」の2つのテーマを並行して進めていく。新型コロナウィルス感染症の影響で、図書館・史料館の利用が依然として制限される状況ではあるが、まずは日本国内において関連する資料の収集を進めていきたい。具体的には、同時代日本の建築雑誌の通覧、さらに日本国内で閲覧できるドイツなど関係各国の当時の雑誌・書籍やCIAM関連の書籍等の調査・収集を行う。 海外調査については、現時点ではまだ実現の可否がわからない状況であるが、可能であれば、夏期もしくは春期休暇中にドイツおよびスイスでの約2週間の調査を実施したい。訪問先はフランクフルトの市史研究所やチューリヒ工科大学の史料館などを予定している。ドイツ等での調査が実施できれば、一次史料に基づいた(1)と(2)の考察を進められるが、仮に令和4年度中に海外調査を実施できない場合でも、日本の戦前・戦中・戦後期の住宅計画と海外との影響関係に重点を置いた調査研究が遂行可能と考えている。そのように状況に応じて臨機応変に研究を進め、いずれの場合も、令和4年度の調査研究の成果を学術講演もしくは学術論文として翌年度にアウトプットすることとする。 また、3つ目のテーマである「(3)「生活最小限住居」の歴史的位置づけの検討」については、令和5年度からの本格的な始動のために随時準備を進めていく。そのために20世紀の住宅計画に関する資料を広く収集するとともに、関連する事例の視察も行いたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の研究計画では、ドイツを中心とした海外調査のための旅費として45万円、さらに海外調査の際の文献複写費・資料収集費として5万円を計上していたが、新型コロナウィルス感染症の影響で海外調査を実施できなかったため、おおよそその分の未使用額が生じた。 (使用計画) 次年度(令和4年度)中に海外渡航が可能であれば、ドイツを中心とした海外調査を1回実施する予定である。新型コロナウィルスの影響等により海外への航空費が大幅に値上がりしている状況にあるため、令和3年度予算の未使用分の一部を使い、次年度の旅費の増額分を補填する形になると考えている。また「今後の研究の推進方策」において記したように、次年度は日本国内での資料収集にも重点的に取り組む予定である。そのため、令和3年度予算の未使用分を国内調査のための旅費にも充て、研究を積極的に推進したい。さらに必要に応じて図書購入費用や資料収集費用としても使用する予定である。
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