2022 Fiscal Year Research-status Report
建築学生コンラート・ピュシェルをとおしてみるマイヤー主導のバウハウス建築教育
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21K04473
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
冨田 英夫 九州産業大学, 建築都市工学部, 准教授 (80353316)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バウハウス / 建築教育 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は主として、ピュシェルがデザイン教育を受けたバウハウス教師達のデザイン教育にかんする分析を進めた。 具体的に、前年の2021年度報告書で述べたように、当初2021年度に実施を計画していた課題「ピュシェルが受講したデザイン教育においても科学的・分析的な傾向があるのか」の課題を1年遅れで実施し、その成果を日本建築学会(国内学会)の研究発表梗概として、大会用(2頁)および九州支部研究発表会用(4頁)を提出した。 本年度の分析によって、バウハウスの空間デザインの到達点として、ヴァルター・グロピウスがバウハウス初代校長在職最後の2年に設計した「全体劇場」案(1927年)がある事を把握した。グロピウスは、バウハウスにおいてデザイン教育を担当した教員達が共有した総合芸術としての演劇像を、建築造形に結実させる形で「全体劇場」案を設計していたと考えられる。 この「全体劇場」案は、グロピウスにおいて構成主義的な作風から機能主義的な作風への変化を決定づけた作品であり、2代目校長ハンネス・マイヤー主導のバウハウスにおける建築理念とも共通する特徴を持っている。グロピウス主導のデザイン教育とマイヤー主導の建築教育がバウハウスにおいて同時に存在した1927年という時期に「全体劇場」案が設計され、共通する建築理念が見られる事から、「全体劇場」案は両者をつなぐ存在と考えられる。そのため、グロピウス主導のデザイン教育とマイヤー主導の建築教育を受けたピュシェルの研究においても「全体劇場」案の存在が重要なポイントになることを把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は「研究実績の概要」で報告したように、2021年度実施予定の課題「ピュシェルが受けたデザイン教育の分析」を1年遅れで進めたため、2022年度に当初予定していた「ピュシェルが受けた建築教育」にかんする分析を進める事ができなかった。この当初予定していた分析については、2023年度の課題として持ち越し、継続して研究する。 このような状況から、「(3)やや遅れている」と自己点検による評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、(1)2022年度に行う予定だったピュシェルが受けた建築教育にかんする分析を1年遅れで進めた上で、(2)もともと2023年度に行う予定である研究成果の総合と公表を行う。 具体的に(1)については、ピュシェルが授業を受けた教師達が執筆した建築教育にかんする史料の分析、およびピュシェルが授業で制作した建築にかんする史料の分析を行う。 (2)については、ドイツにおける理工系の築教育の系譜をたどり、バウハウスの建築教育を建築教育史・デザイン教育史の上に位置づけ、マイアーの建築教育の歴史的な意義を明らかにする。 以上の研究成果を日本建築学会の英文誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、国内学会がすべてオンライン開催であったため旅費の支出がなかったためである。次年度使用分の使用計画は、論文での画像使用料に充てる予定である。
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