2021 Fiscal Year Research-status Report
圧力増大燃焼で作動する高効率ガスタービンの実証研究
Project/Area Number |
21K04481
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
櫻井 毅司 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (10433179)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 圧力増大燃焼 / ガスタービン / パルス燃焼 / 熱効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は圧力増大燃焼(Pressure-gain combustion)であるパルス燃焼をガスタービンに応用し,その熱効率を従来機に対して+10%程度向上することを目標としている.本申請研究までにパルス燃焼による圧力増大の可能性とガスタービンの自立運転を実証しているが,圧力の増大は小さく,値の評価方法にも検討の余地を残していた.また,ガスタービン性能やパルス燃焼が圧縮機やタービンの作動に及ぼす影響についても調査が及んでいなかった. そこで,本研究では圧力増大の評価方法を検討するとともに適切な燃焼条件を見出すことで5~10%の圧力増大の実現に取り組むことを目的の一つとしている.また,パルス燃焼時の圧縮機やタービンの作動状態およびガスタービン性能を取得して,既存の定圧燃焼で作動するガスタービンと性能比較を行い,本ガスタービンの利点や欠点を明らかにすることも研究目的としている. 本年度は実施計画に予定した①パルス燃焼による圧力増大燃焼の実証に取り組み,パルス燃焼サイクルのガス流量変動を加味したサイクル平均圧力評価法を燃焼室の入口と出口圧力計測に適用した.その結果,出口のサイクル平均圧力は入口の値よりも6.7%ほど圧力が増大していることを確認した.この値は研究目標値の5%を上回る値であり,燃焼条件の調整には十分に余地を残していることから幸先の良い結果を得た. また,文献調査の結果,推力に基づくエンジン性能の評価方法を知り,当初計画に先立ち③ガスタービンの性能評価にも取り組んだ.推力計測装置を製作し,得られた値からパルス燃焼時の熱効率や出力を取得することが可能となった.一方で,定圧燃焼モードからパルス燃焼モードに移行した際に燃料や空気流量が大きく変化したために両者の性能比較までには至らなかったものの,圧力増大燃焼で作動するガスタービンに共通する課題が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【①パルス燃焼による5~10%の圧力増大燃焼の実証】 圧力増大燃焼をガスタービンに応用した研究を対象に圧力増大の評価方法について文献調査を行ったところ,世界的に一致した見解は得られていないものの,燃焼サイクルの瞬時圧力を瞬時ガス流量で重み付けしてサイクル平均圧力を評価する方法が妥当な評価法であることがわかった.これを適用してパルス燃焼室の入口と出口で圧力と温度,ガス流速を計測し,瞬時ガス流量を求めた.流速計測でははじめにLDVの適用を試みたが,計測機器の故障が発覚したため,PIV計測で流速を評価した. パルス燃焼では燃焼タイミングが不規則になる現象や不着火事例などが見られたため,適切な燃焼条件を探索するために燃焼室内をシュリーレン観察した.この結果に基づき,水素燃料の噴射と点火プラグの着火時期を調整し,また残留燃焼ガスによる着火を防止するために水素の噴射位置も変更することで燃焼タイミングが安定するようになり,同時にパルス燃焼の圧力ピークも上昇する結果を得た.サイクル平均圧力を評価したところ,燃焼室の入口に対して出口では6.7%圧力が増大していることがわかった. 【②圧縮機やタービンの作動状態推定】 推力計測に基づくガスタービン性能の評価を優先したために,本項目のデータ取得は休止した.一方でガス流速計測に用いるLDV装置は①圧力増大評価で使用し,本実験システムに用いる計測の準備を進めた.また,LDV装置は故障が発覚したため修理し,翌年度は使用可能である. 【③ガスタービン性能の評価】 非定常なジェット噴流が生じる推力の計測に推力板を用いる先行研究を知り,また,同様の推力計測方法が本研究と同様のパルス燃焼で作動するガスタービンに適用されている研究例も文献調査で知った.推力計測装置を設計製作し,パルス燃焼時の出力や熱効率を評価することが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
【①パルス燃焼による5~10%の圧力増大燃焼の実証】本年度はパルス燃焼する燃焼室で6.7%の圧力増大が得られていることを確認した.一方,2本の燃焼室を組み合わせて使用する本研究の燃焼器では,各燃焼室が合流する燃焼器出口(=タービン入口)において圧力増大を得ることが重要である.しかし,燃焼器出口部にはガス流速計測に必要な流路の可視化窓を設けていなかったため,本年度にはこの位置で圧力増大を評価することが出来なかった.現在までに燃焼器出口部の改良設計を進めており,翌年度はこの位置で圧力増大を評価していく予定である. パルス燃焼によるサイクル平均圧力は燃料の噴射量や燃焼サイクルの速度で変化すると考えられる.本年度は平均圧力に対するこれらをパラメータとした燃焼条件の調査には着手できなかったため翌年度に取り組み,より高い圧力増大の達成を試みる. 【②圧縮機やタービンの作動状態推定】 本年度の成果でパルス燃焼が安定するようになり,ガスタービン運転も容易に行えるようになった.翌年度はパルス燃焼が圧縮機やタービンの作動に与える影響について調査を進める.なお,圧縮機出口のガス流速計測に用いるLDV装置は修理し使用可能な状態となっており,またタービン入口についても上記①の通りガス流速の計測が出来るように装置の改良に着手し始めている. 【③ガスタービン性能の評価】 パルス燃焼モードのガスタービン運転では定圧燃焼モードと比較して燃焼器の圧力が上昇する結果,水素流量を一定に保持することが出来ていない.また,パルス燃焼モードでは燃焼器を構成する2本の燃焼室間でも圧力差に起因して水素の流量配分が大きく変化している.パルス燃焼モードと定圧燃焼モードのガスタービン性能を比較できるように翌年度は水素流量を運転状態に合わせて制御する供給系の構築に取り組む.
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた国際ワークショップ(当初2022年3月)が新型コロナウィルスの感染拡大のために翌年度へ延期されたため旅費分として予定した金額を翌年度へ繰り越すこととした.このワークショップは年度末の開催予定であったことに加え,様々な研究機器の納期も遅れていたためにワークショップの延期に伴う余剰金を年度内に使用することが難しかった.
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Research Products
(3 results)