2022 Fiscal Year Research-status Report
Design of Pseudo-ductility in Fibre Reinforced Composites by Controlling Interlaminar Properties
Project/Area Number |
21K04482
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中谷 隼人 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90584417)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炭素繊維複合材料 / 擬似的延性挙動 / フラグメンテーション / 層間破壊靭性 / アコースティックエミッション / ファイバメタル積層材 / 界面強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,CFRP積層板に繊維不連続部(0°層)および層間メッシュ層を導入することによる微小損傷の蓄積によって発現する擬似的延性のさらなる精緻化に取り組んだ.まず,微小損傷蓄積に有効な層間メッシュ層の導入位置を評価し,さらに繊維不連続部から発生する層間はく離をある程度許容するための層間メッシュ層での切り込みを組み合わせた.これにより,デジタル画像相関法により測定した繊維不連続部付近の表面ひずみの分布において,最大破断ひずみが約2倍となることを明らかにした.今年度は引張試験中に測定したアコースティックエミッション(AE)のピーク周波数にも着目し,層間メッシュ層の導入により,CFRP積層板での母材き裂の発生と思われる周波数帯域のAEが試験開始から破断まで絶えず発生し続けることと,メッシュ層に起因する新たな損傷モードも擬似的延性挙動に寄与することを示した. 擬似的延性によるエネルギー吸収能の材料設計への応用例として,層間メッシュ層を導入したCFRPアングルプライ積層板が両端切り欠きや面外衝撃損傷などの応力集中部を有する場合の残留引張強度や疲労寿命について評価した.層間メッシュ層を導入することで,負荷する衝撃エネルギーに関わらず,引張負荷での強度や破断変位の低下を10%未満にとどめるという顕著な成果がみられた.疲労負荷では,層間メッシュ層による応力集中緩和効果により,あたかも応力集中部が存在しないかのように材料全体で微小損傷を蓄積することで疲労寿命が大幅に向上することを,X線CT等による内部損傷の詳細観察により明らかにした. このような層間メッシュ層の導入によるCFRP積層板での擬似的延性の発現とその応用例を扱う本研究は,これまでにないCFRP積層板の使い方を可能とするものであり,CFRP構造の更なる普及に向けて大きな意義がある内容となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度からの継続内容として研究2年目に評価を計画していた,繊維不連続部と層間メッシュ層導入によるCFRP積層板の擬似的延性の発現の確認とそのメカニズム,および,試験中のAE解析を用いた微小損傷発生・蓄積と応力-ひずみ挙動上の擬似的延性の関係について,今年度はデジタル画像相関法による表面ひずみの分布や試験中のAEの周波数解析という多角的な評価から理解をさらに深めることができ,擬似的延性の向上につながる設計指針を得ることが出来たことなど,期待していた成果が得られた.なお,繊維不連続部の面内方向の2次元的配置によるグローバルな大ひずみの発現にも取り組む予定ではあったが,これは試作段階に留まった.その代わりに,本技術で重要なパラメータであるメッシュを構成するPA(ポリアミド)繊維とCFRP積層板の母材であるエポキシとの界面強度をマイクロボンド試験およびCruciform試験により取得し,炭素繊維/エポキシ界面強度と比較するまでに至った. 研究期間3年間を通して評価を計画している本研究の応用例についても,今年度はCFRP積層板が応力集中部を有する場合の引張強度や疲労寿命に対して本技術が顕著な効果を示すなど,現実的な負荷形態における複合材料への擬似的延性の付与の有効性を予定通り証明しつつある. 以上のことから,研究2年目の計画をほぼ達成できているため,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
試験中に測定されるAEのピーク周波数とそれに対応する損傷モードを明確に対応付け,試験開始から破断までに発生する損傷モードの変化を評価することで,微小損傷発生・蓄積による擬似的延性の発現メカニズムをさらに詳細に理解する.これに向けて,CFRP積層板内の母材き裂や層間はく離等だけでなく,PAメッシュを用いた層間メッシュ層の導入によるPA繊維/エポキシ界面のはく離やPA繊維の破断など,本研究特有の損傷モードが発生する際のAEの波形パターンやピーク周波数の取得に向けた実験を進める. また,繊維不連続部の面内方向の2次元的配置を扱い,これまで扱った繊維不連続部付近のローカルひずみとしての擬似的延性を重ね合わせることで,試験片全体のグローバルひずみにおいても擬似的延性につながることをデジタル画像相関法等により評価していく.特にここでは,繊維不連続部の角度や面内密度などのパラメータに着目して様々なパターンを検討する. 本研究の応用に向けては,これまでの引張負荷や引張-引張疲労負荷だけでなく,曲げ試験や機械的接合試験にも取り組み,破壊までの微小損傷の蓄積挙動を理解することで,脆性破壊を示す従来の複合材料では困難とされる破壊の前兆を捉えることが可能となることを示す.同時に,層間特性のコントロール手法としてこれまで用いたPAメッシュだけでなく,金属薄板や金属メッシュを用いて一種のファイバメタル積層材(FML)とするなど,種々の適用場所に求められる様々な擬似的延性の付与を可能とする材料デザインに取り組む.
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Causes of Carryover |
2021年度に発生したAE計測システムの導入計画変更による繰り越し分について,2022年度と2023年度に分けて使用する計画を立てている.2022年度はプリプレグやナイロンメッシュ等の材料費その他試験用の消耗品費が当初の予定よりも多くなり,また研究の進捗にともない研究発表の機会を増やしたために旅費も多くなったために当該年度の交付分では不足したが,2021年度からの繰り越し額の約半額をこれに充てた.このように,2021年度からの繰り越し額の約半額分が次年度(2023年度)使用額として生じたが,これは2022年度開始当初から計画していたものである.これに関しては,2023年度請求分と合わせて,主に評価試験のための材料費・消耗品費や旅費,その他の費用として有効活用する.
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