2021 Fiscal Year Research-status Report
狭領域プラズマ計測手法の確立と超小型RFプラズマスラスタへの応用
Project/Area Number |
21K04485
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
大塩 裕哉 龍谷大学, 先端理工学部, 助教 (80711233)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラズマ計測 / 光学計測 / 電気推進 / 高周波プラズマ / 超小型衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
超小型人工衛星は中小規模の企業や大学などでも開発可能であり、宇宙開発のハードルを大きく下げることが期待されている.近年,燃費性能の高い超小型プラズマ推進機(スラスタ)の開発と宇宙実証が進められる一方で,超小型人工衛星の多目的化に伴い更なる高い性能が要求されている.プラズマスラスタの研究開発にはプラズマ現象の理解が不可欠である.しかし,超小型スラスタの数 mm程度の狭領域のプラズマの空間分布の取得は困難であり研究の足かせとなっている.本研究では,狭領域プラズマの空間分布計測のための光学的手法を確立と,確立した計測法を超小型高周波(RF)プラズマスラスタへ適応し,スラスタ内と近傍のプラズマ特性を明らかにし,性能最適化のための指針を示すことを目指す. 初年度は、超小型RFプラズマスラスタのスラスタ出口近傍10mm×5mmの領域の420 nmと488 nmの輝線強度の2次元分布を同時に計測可能な計測システムを構築した。得られた2次元強度分布より、軸対称を仮定した逆アーベル変換により局所的なプラズマ分布を取得した。その際、複数の露光時間での撮影結果を合成することで、30倍以上の密度差での計測を行うことが可能となった。これらの計測と解析により、既存のプローブ法等では空間分布の取得が困難な微小領域での電子数密度と中性粒子密度の2次元分布の計測に初めて成功し、電力や流量を変化させた際のスラスタ出口近傍のプラズマ分布特性を明らかにした。特に、流量によりプラズマの生成位置や排気プラズマ流が大きく変化することを示し、推力と対応する排気プラズマ流が多くなるために、必要な流量が存在し、それ以下では劇的に排気プラズマが少なることが明らかになった。また、計測範囲下流端でのプローブ法との比較を行い、本計測法にて定性的に妥当な空間分布が得られていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、本研究テーマのキーとなる微小領域でのプラズマの2次元分布が計測可能な計測システムの構築を行った。当初の計画通り、最も簡易的な定性的計測かつ軸対称近似に基づく計測ではあるが、既存のプローブ法等では空間分解が困難な、超小型スラスタ出口近傍のプラズマの2次元分布の計測に成功した。スラスタ出口より5mm×10mmの領域を空間分解能約0.4mm計測することができた。この結果は、計測範囲下流端における既存のプローブ法との複数点での比較と動作電力に対する依存性の比較を行い、両者が定性的に一致することから、本研究で新たに構築した計測法の定性的な妥当性が示された。この計測法を用いて、超小型RFプラズマスラスタの動作電力ならびに流量に対する排気プラズマの特性を明らかにした。また、内部計測用の光ファイバープローブにおいても、光学系の構築と外部からの予備的な試験を実施し、初期フェーズにおける主要な目的は達成された。 一方で、特定の流量条件でプラズマが外部に放出されないことや、内部での不均一なプラズマ構造などが本研究により明らかになり、超小型プラズマスラスタの狭領域のプラズマ現象解明のためにはこれらの現象の解明が新たに必要になる。これらの初期的な特性調査を現在実施中であり、計測系の改良に若干の遅れが出ている。また、低電力動作条件時の比較的暗い発光時には、S/N比の関係で低密度領域の計測できないことが判明し、現在計測方法と光学系の改善に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、初期フェーズで構築した計測法を用いて、超小型プラズマスラスタのスラスタ内外のプラズマ分布計測を、複数の動作条件、スラスタ構成にて実施し、各条件がプラズマ構造へ与える影響を明らかにする。この際、これまでに本研究にて明らかになった、特定の流量条件でプラズマが排気されない現象と、スラスタ内で不均一な構造が生じる現象のために、これらの各条件に対する特性を明らかにする。これを基に、上記現象について明らかにしていく予定である。また、希薄流体の数値解析などとの比較により、より詳細な現象の解明を目指す。 計測法の観点においては、これまでは電子数密度と中性粒子密度の空間分布を主な対象としていたが、定量的な強度校正を行い輝線強度比較法により電子温度分布の計測を目指す。また、輻射モデル等を用いた比較により定量的なプラズマ計測に向けた計測の高度化を進めていく。また、現在は軸対称流を対象としている計測を、非軸対称流へと拡張するために複数視点からの輝線強度分布からの3次元構造構築に向けた計測法の準備を進めていく。 現在、低電力条件において低密度領域でのS/N比が不足しており、計測精度が低いという課題がある。この問題については、現状より新たに低ノイズかつ高感度のカメラを用いることと、光学系の透過率の改善、長時間露光や、複数ショットによる加算平均処理などを組み合わせることで改善できる見込みである。
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Research Products
(2 results)