2022 Fiscal Year Research-status Report
分子上コンタミネーション薄膜形状がもたらす光学特性発現有無の解明
Project/Area Number |
21K04489
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
土屋 佑太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任 (80726919)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンタミネーション / CMOSセンサ / 透過率 / 反射率 / 散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙の真空環境では、衛星に使用される接着剤などの材料内部からガスが発生し、発生したガスが衛星自身の温度が低い光学部品などに付着することで、光透過率等の光学特性が劣化する現象が知られている。本現象を分子状コンタミネーションと呼ぶ。 宇宙機器に発生するコンタミネーションの予測・管理には、これまで薄膜厚を指標・基準として議論されてきたが、ミクロンメートルの薄膜厚を真空低温下で測定することは一般的に難しいことから、薄膜密度を”1g/cm3”と仮定して付着したコンタミネーション質量の実測値から薄膜厚を算出している。しかし薄膜密度が1g/cm3かどうかは実測されたことがなく、コンタミネーション予測・管理技術の大きな誤差要因となっている可能性がある。宇宙機器の開発にとって、誤差による過大な予測・管理技術はコストに直結するため、本研究はコンタミネーション薄膜の密度を初めて実測することで薄膜密度を解明し、ひいては宇宙機器開発のコスト削減やコンタミネーションの発生予防に貢献することを目指すものである。 2022年度は2021年度までに確立した真空低温下で発生するコンタミネーション薄膜形状の変化をリアルタイムに観察する実験手法と、取得画像から薄膜形状の直径と被覆率を求める画像処理方法を用いて、薄膜の密度を求めるための実験・測定条件を考察した。 考察の結果、取得画像から薄膜密度を求めるための測定条件の肝となる照明光 (光源) の入射角とコンタミネーション薄膜高さの関係を導いた。結果、形成される薄膜高さにもよるが、概ね光源入射角度を10~60°に設定すると良い条件で薄膜密度が求められることが判明した。分子状コンタミネーションの薄膜密度は、実際の真空低温下で実測した例がなく、世界初の測定例につながる成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、安価かつ正確にコンタミネーション薄膜形状を測定可能なCMOSカメラセンサを用いた独自の観測手法を用いるとともに、光源入射角度を概ね10~60°に設定すると良い条件で薄膜密度が求められることが判明した。真空チャンバ内に設置できる測定系の大きさには制限があるが、光源入射確度が45~60°であれば無理なく設置可能な見通しを得られた。2022年度中に、求めた最適な照明条件を実現する測定系を準備し、初となる薄膜密度の測定例を取得する計画であったが、測定系の準備に時間を要しており、年度内に密度算出に用いる画像取得の実験実施まで至らなかったため、進捗は「やや遅れている」状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
技術的な問題は発生しておらず、次年度初めには測定系の準備を完了し、分子状コンタミネーション薄膜の真空低温下で取得した画像と、新規提案する手法により薄膜密度を計算し、これまで仮定されていた1g/cm3というコンタミネーション薄膜密度の初の実測例の取得、さらにはコンタミネーション種別による密度の差異の有無を解明する。
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Causes of Carryover |
密度解明のための画像取得実験が次年度になったため、実験に使用する消耗品類の使用について次年度に先送りした。
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