2023 Fiscal Year Research-status Report
分子上コンタミネーション薄膜形状がもたらす光学特性発現有無の解明
Project/Area Number |
21K04489
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
土屋 佑太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (80726919)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コンタミネーション / CMOSセンサ / 透過率 / 反射率 / 散乱 / 薄膜形状 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙の真空環境では、衛星に使用される接着剤などの材料内部からガスが発生し、発生したガスが衛星自身の温度が低い光学部品などに付着することで、光透過率等の光学特性が劣化する現象が知られている。本現象を分子状コンタミネーションと呼ぶ。 宇宙機器に発生するコンタミネーションの予測・管理には、これまで薄膜厚を指標・基準として議論されてきたが、ミクロンメートルの薄膜厚を真空低温下で測定することは一般的に難しいことから、薄膜密度を”1g/cm3”と仮定して付着したコンタミネーション質量の実測値から薄膜厚を算出している。しかし薄膜密度が1g/cm3かどうかは実測されたことがなく、コンタミネーション予測・管理技術の大きな誤差要因となっている可能性がある。宇宙機器の開発にとって、誤差による過大な予測・管理技術はコストに直結するため、本研究はコンタミネーション薄膜の密度を初めて実測することで薄膜密度を解明し、ひいては宇宙機器開発のコスト削減やコンタミネーションの発生予防に貢献することを目指すものである。 2023年度は、光源入射角度を80°に設定し,コンタミネーション薄膜の密度解明を目的として薄膜形状の観察を行った.事前検証通り光源入射角度を変化させることで,入射角度変化に合わせてコンタミネーションのミクロンオーダでの形状が変化する様子を捉えることに成功した.ここ時の観察分解能は,使用したCMOSカメラセンサの画素ピクセル1.67ミクロンメートルに等しい.得られた画像をもとに,コンタミネーション薄膜の形状輪郭を抽出するアルゴリズムを構築し,密度算出に必要な光源の入射角度に合わせて定量的にコンタミネーション形状の変化量を算出することに成功した.続いて得られた形状変化量からコンタミネーション形状体積を求め,同時に測定している付着質量から,低温真空下におけるコンタミネーション密度の算出を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で解明を目指していた,「コンタミネーション形状と光透過率の変化」については2021年度にて,本提案手法によりコンタミネーション形状を定量的に観察できたことで,明確な関係性を実証することに成功した.もう一つの目的である「コンタミネーション形状の密度解明」を目指して,事前検証通り,光源入射角度を変化させることで,入射角度変化に合わせてコンタミネーションのミクロンオーダでの形状が変化する様子を捉えることに成功した.現在得られた変化量からコンタミネーション形状体積を求め,同時に測定しているQCM (Quartz Crystal Microbalance) センサで得られる質量から,低温真空下におけるコンタミネーション密度の算出を試みる.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度途中から2023年度の途中まで,他業務への異動を挟んだことから,研究期間を1年延長して研究成果の創出を狙う.実験で使用する真空チャンバの大きさ制約により,光源入射角度が80°にとどまっている.より密度算出に向けた解析が用意と予想されるが容易光源入射確度が45~60°とできるように実験機材を改修する. 画像解析からコンタミネーション形状の面積などを算出する手法については前年度までに確立できたことから,本成果をもとに密度算出をはじめとした成果創出を急ぐ.
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Causes of Carryover |
2021年度途中から2023年度の途中まで,他業務への異動を挟んだことから,研究期間を1年延長して研究成果の創出を狙う.それに伴い,実験に使用する消耗品類の購入についても次年度に先送りした.
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