2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of new methods for the prevention of cypris lavae settlement to the place where biofouling should be prevented
Project/Area Number |
21K04516
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三村 治夫 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90190727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広野 康平 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80346288)
堀田 弘樹 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (80397603)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 付着期幼生 / フジツボ / 近赤外光 (940 nm) 照射 / 忌避行動 / 着生阻害 / 船底・プロペラ防汚 |
Outline of Annual Research Achievements |
フジツボ付着期幼生が視覚できる波長及びその光の放射強度と付着期幼生が着生位置を決める行動の相関について、十分な基礎研究が為されていない。付着期幼生が走光したり忌避行動を示したりする光の波長と放射強度を定量化することによって、光による着生制御研究を新しい船底防汚手法に拡張できる。現在の船底防汚は毒性物質が船底から溶出することで船底を防汚しているため、海水中に存在し続ける化学物質が海洋微小生物に害を与えている。持続可能な海運を具体化するうえで、船底防汚は不可欠である。光を利用して付着期幼生を誘導し着生位置を制御する手法は、従来の防汚手法と比べて優位性があると筆者らは考えている。 初年度から引き続き、中心波長940 nmの近赤外光を平板へ放射し、付着期幼生の着生頻度の減少の有無を定量した。暗室内に水槽(42 cm x 32 cm、高さ20 cm)を置き、10 cmの深さまで海水を満たした。海水表面から8 cm上方に近赤外LED光源1個を固定し、浸漬した平板表面へ光を照射した。光源直下の水面位置における放射強度は約76.0 W m-2であった。 同一容器内に平板を2枚浸漬した。光が到達する平板表面に着生した個体数を、非照射の平板に着生した個体数と比較した。夏季に独立した実験を3回行った結果、2つの平板に着生した総数(23個体(1回目)、29個体(2回目)、35個体(3回目))に対して、わずか8.5+-3.9%(n=3)が光照射下の平板へ着生した。光照射時、平板中央の温度上昇は約0.4℃であった。これらの結果は、平板表面の温度上昇によって付着期幼生の着生率が下がったと考えるより、平板に到達した中心波長940 nmの近赤外光が付着期幼生の着生を阻害したと考える方が妥当であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この2年間、暗室内で、中心波長940 nmの放射光が付着期幼生に対して忌避行動を起こさせる効果があるかを確かめる実験を行った。その結果、中心波長940 nm(平板到達時の放射強度の推定値: 平板中央で58.3 W m-2、平板端5 cm位置で34.2 W m-2)の近赤外光に、付着期幼生に対して忌避行動をおこさせる効果があることが解った。 実海域は、暗室実験のように近赤外光のみの光しか存在しない状況ではない。実海域では太陽光の入射方向が時間によって変わる。夏季は付着期幼生の個体数が最も多くなるので、浸漬実験に適した季節である。この時期は、植物プランクトンや動物プランクトン等の微小生物の個体数も多く、これらの個体群が光源から放射される近赤外光を遮るため、平板へ到達する照射エネルギーが大きく減衰し、近赤外光の有する付着期幼生に対する着生阻害効果が低下することが予想される。光の減衰率は長波長になるほど大きくなる。このような状況を乗り越えて、微小生物の個体数が多い夏季に、暗室で得られた着生忌避効果を実証することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
近赤外光(中心波長940 nm)の放射エネルギーが、付着期幼生に対して忌避行動を誘発する効果を有することを実海域で浸漬実験を行い実証する。市販されている光源(LED4個を2行2列に配置してある)を使用する。このLED1個の放射角は+45°(全体で90°)である。光源から平板までの距離を5 cmに固定し、夏季(7月~8月)に、実海域に浸漬した平板(40 cm四方)表面の着生数を、光非照射の平板へ着生した個体数と比較し、着生阻害効果(防汚効果)を定量する。 浸漬期間中の海水の透明度を透明度板(セッキ―板)を浸漬して測定する。直径30 cmの白色円盤が目視できなくなった深度(m)を透明度とする。海水の透明度の低下と光源から平板へ到達する放射エネルギーの減少量は相関する。光照射と非照射下の着生数の差異を海水の透明度値を用いて考察する。
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