2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Engine-room Resource Management to Respond to Technological Advances in Maritime Autonomous Surface Ships
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21K04517
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内田 誠 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90176694)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 船舶機関管理 / 機関室資源管理(ERM) / 船舶機関シミュレータ(ERS) / IMO Model Course 2.07 / 非技術的技能(Non-tech. Skills) / 業務負荷(Work Load) / 行動観察(VACP) |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋基本計画における施策「海上輸送の確保」および「海洋人材の育成と国民の理解の増進」の一貫として「海技者の育成・確保」の重要性が示され、高いレベルの管理能力を有した日本人海技者の継続的な輩出の重要性が指摘されており、国際的には2010年マニラ締約国会議で改正されたSTCW条約が、2017年から完全施行された。また、近年の飛躍的な情報通信技術の進展に基づき、MASS(海上自律航行船)の試行や国際基準の策定の議論が始まっている。これら背景に基づき、自律航行機能の技術進展を要素に取り込み、高度で先進的なERM(機関室資源管理)を実践する手法を導き、評価手法の提案と普遍化による社会実装を試みるため、以下の活動に取り組んでいる。 本研究で研究対象とするERMとは、船舶運航に関する機関運転管理領域において、リソース(要員、機器、情報・環境)を適切に管理し、有効に活用しながら安全運航を実現する一つの手法である。ERMの実践では、コミュニケーション、明確な意思表示、リーダーシップ、状況認識力などの人的要素を中心とした、高い非技術的技能が重要となる。本研究活動は、以下の4点に大括り出来る。 ①ERM実務現場(海運業、船舶管理業、教育訓練機関等)での最新実情の調査・把握、②ミクロ視点ERMの評価手法の開発(普遍化)、③マクロ視点ERMの実践方法の開発と効果検証、④自律航行機能の技術を取り入れたミクロおよびマクロ視点ERMの試行検証 2021年度活動は②に注力した。①から④を通じた活動実績に基づき、ERMを研究対象として新たな概念を導入し、機能向上や評価手法の普遍化を、船舶海洋工学・情報科学・認知工学・海事社会学を連携させて学術的に取り組み、その成果の社会実装・還元を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要後半で示した本研究活動の主要項目①から④の前半部に関する進捗状況を以下に示す。 ①ERM実務現場での最新実情の調査・把握として、STCW条約改正に基づくERM強制要件化に伴うERM研修環境の充実を目指した船舶機関シミュレータ(ERS)の国際的なレベルでの普及とERS機能の技術向上が著しい状況の中、他方、ERM実務現場においてERS機能に適応したERM研修プログラムおよび評価手法が確立されているか整理された情報は極めて少なく、本研究課題において、ERSおよびERMのハード面及びソフト面に関する調査を行い、最新実情の把握を行う計画であるが、COVID-19対応に伴う活動制約および国際社会状況が改善傾向の兆しを示す中、本科研活動期の中盤以降で注力することとした。 ②ミクロ視点ERMの評価手法の開発(普遍化):STCW条約改正に対応してIMOが改訂したModel Course 2.07には、ERS環境におけるERM研修の基本事項として、Technical SkillとNon-technical Skillそれぞれに着目した2種の典型例が示されているものの、ERM研修の評価手法は明確に示されていない。IMOが提案する基本事項に則り、従来型のミクロ視点で多様なERM研修プログラムを開発して試行した。船舶機関士(被験者)の客観的および主観的の両面から心的負荷の常時把握を試みている。ERM研修シナリオは複雑な要因を多数含むため、認知工学実験で広く活用されているリファレンス環境の採用と、ERM研修中の主観的心的負荷をNASA-TLXにより、客観的心的負荷をVACP(行動観察)により把握し、ERMにおける人的要因の分析を進めている。 根幹となるERM研修過程および結果に対する普遍的な評価手法の開発により、人的要因に起因する不安全状態を把握し、事故等の顕在化を未然に回避する事を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」後半で示した本研究活動の主要項目①から④の後半部に関する推進方策を以下に示す。 ③マクロ視点ERMの実践方法の開発と効果検証:先行研究において、運航支援組織(陸上)からの「支援」の要素が、ミクロ視点ERMにおける人的要因(現状把握、解決策の探索・理解、一点集中・慣れによる不安全)に、功罪両面で大きく影響を及ぼす可能性が明らかになっている。これら要素の影響・効果に関する評価手法に関し、数値モデル(SD:システムダイナミクス)による精緻化を試みる。 ④自律航行機能の技術を取り入れたミクロおよびマクロ視点ERMの試行検証:MASSの試行や完全無人化への移行期においてはB0(船橋無人化)が急速に進行することが想定される。その一方で、機関領域における運航管理現場(本船上)の省人化は想定されるものの、推進動力源である高出力原動機関を保守・維持・整備するための要員は不可欠であり、運航管理現場(本船上)と運航支援組織(陸上)の役割分担と連携強化が必至である。自律航行機能に関する技術進展を常時モニターし、遠隔監視技術(室内ドローン、スマートグラス等)、海上高速ブローバンド、ビッグデータ処理技術などの最新技術を積極的に取り入れ、船陸間が高度に連携して地球規模での空間を超えるよう、ミクロ視点およびマクロ視点のERMの融合を図る。
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Causes of Carryover |
2021年度の執行計画の設備備品「ERM開発環境システム」の一部は概ね当初予定とおり執行し、年度内研究活動に活用すると共に、次年度以降の研究発展のため継続的に活用する。調査・打合せ目的の国内旅費および外国旅費は、「研究実績の概要」で示した本研究活動の主要項目①の自粛に伴い、執行計画を設備備品等予算の一部と共に次年度以降に繰り延べることとした。 繰り延べた予算は、2022年度に当初執行を予定している「ERM演習システム」の機能拡充に活用する。さらに、研究成果公表のため国内外で開催される学術会議への参加に活用する。
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Research Products
(5 results)