2021 Fiscal Year Research-status Report
推進性能と操縦性能の両性能を考慮したプロペラ・舵システムの最適化に関する研究
Project/Area Number |
21K04518
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安東 潤 九州大学, 工学研究院, 教授 (60211710)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロペラ / 舵 / 推進性能 / 操縦性能 / 流体力学的最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
推進と操縦の両性能を考慮したプロペラ・舵システムの最適化ツールのベースとなるのは、既に開発済のプロペラ設計支援ツールである。プロペラ設計支援ツールとは、初期プロペラの性能が向上するように最適化手法を用いて自動的に改良を行うコンピュータプログラムであり、原型プロペラの幾何形状およびその他いくつかの設計パラメータを入力するだけでキャビテーション等の制約を考慮しつつプロペラ性能が最高となるようなプロペラ幾何形状を自動的に求めようとするものである。本ツールの信頼性を高めるための努力をこれまで継続して行ってきたが、本ツールで使用している最適化計算法では最適解の探索効率が必ずしも高くないことが判明した。 そこで、プロペラ設計支援ツールの改良を行った。具体的には、現在最適化計算法として用いている実数値遺伝的アルゴリズムに粒子群最適化という手法を組み合わせた方法を考案した。 次に、まずは推進性能面で優れた舵に的を絞り研究を進めた。プロペラの回転流を回収するために舵にフィンを取り付け、舵抗力の減少を図ることがよく行われているが、その効果は明確に公表されていないのが現状である。そこで、フィン付舵の舵抗力減少のメカニズム解明のため、舵に取り付けるフィンの平面形状や取り付け角を種々変化させた回流水槽における実験および数値計算を実施した。その結果、ただ単に舵にフィンを取り付ければ舵抗力が減少するということはなく、逆に舵抗力が増加するような平面形状や取り付け角があることが判明した。舵抗力が減少するようなフィンの最適な平面形状や取り付け角は、上述のプロペラ設計支援ツールを応用すれば見出すことが可能と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時に立案した研究実施計画に従い、プロペラ設計支援ツールの改良を行った。さらに推進性能面で優れた舵に関する研究として、フィン付舵の舵抗力減少のメカニズムについて新しい知見を得た。 よって本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず令和4年度は、令和3年度に引き続き推進性能面から舵抗力の小さなフィン付舵に関する研究を継続する。すなわち、プロペラ設計支援ツールを応用し、プロペラ後流中で舵抗力が小さくなるようなフィンの平面形状、取り付け角、さらに翼断面まで含めて見出すこととする。 次に、操縦性能面からの検討を行う。回流水槽において何種類かのフィン付舵をプロペラ後流中で舵角を取った状態で設置し、操縦性能面で重要な舵の直圧力を計測し、舵抗力と舵直圧力の関係を確認する。 もし、舵抗力と舵直圧力の間にトレードオフの関係があることが判明した場合は、多目的最適化手法を用いて、舵抗力と舵直圧力の両面において最適な舵のフィン形状を求めることとする。
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Causes of Carryover |
舵の模型製作を業者に依頼する予定であったが、令和3年度は研究の初期段階ということもあり、多くの舵形状の性能を水槽実験で確認することに重点を置いた。しかしながら、多数の模型製作を業者に依頼すると納品に時間を要することが懸念された。そこで、特に模型表面の滑らかさといった面で工作精度は多少劣るかもしれないが、手持ちの3Dプリンタで模型の製作を迅速に行った。このため当初の予定よりも経費が抑えられたが、令和4年度は候補を絞り込んだうえで舵模型の製作を業者に依頼する。よって、令和4年度は模型製作に要する経費が増加することが見込まれるが、最初の2年間を通して考えれば当初の計画に近くなるものと思われる。 また、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み出張を控えたため、旅費の支出がゼロとなった。このことも、次年度使用が生じた理由の一つである。
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