2022 Fiscal Year Research-status Report
舶用発電機を用いた廃食用油の再資源化の可能性について
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21K04519
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
秋葉 貞洋 弓削商船高等専門学校, 商船学科, 准教授 (60332079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 宗明 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (00444612)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 舶用ディーゼル機関 / 代替燃料 / 排気改善 / 再資源化 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4(R4)年度は,研究課題「舶用発電機を用いた廃食用油の再資源化の可能性について」を遂行するため機関に接続した動力計の動作確認および動力計の操作の完熟訓練を行った.それに加え,動力計に接続したクランク角度検出器の信号と物理的なTDCの調整作業を行った.そして,(2)燃焼解析装置の操作の完熟訓練,設定作業を行った. (1)ではR3年度報告書に報告した通り,小型機関用の動力計関係作業が3月下旬以降へ伸びたため,3月~4月にかけて動力計と小型機関と接続作業を行い,4月にメーカ立ち合いのもと動力計の動作確認および操作方法の説明を受けた.そして,卒研生向けの動力計操作手引書を作成し,操作の完熟訓練を行った.また,操作にあたり,学生が容易に操作できるよう,動力計の給水系の改造を行った.(2)に関しては5月にメーカ立ち合いの操作説明を受け,設定を行った.燃焼解析を行うにあたり正確なTDC信号が必要なため,角度検出器の接続を調整し,TDC信号の物理的な位置合わせを行った.しかし,角度検出器の位置をオシロスコープで確認しながら操作すると,TDC信号の検出が不安定であり,位置決定が行えなかった.これは正確な信号を出すためには最低回転数があり,手動では調整は不可能であった.そのため,モータリングによる筒内圧信号を採取し,最高圧力点をTDCと定めることにした.しかし,動力計とディーゼル機関はタイヤカップリングで接続しているため,回転数や負荷でカップリングのたわみにより,機関のTDCと動力計に取り付けた角度検出器のTDC信号がずれる可能性が浮上したため,動力計に接続した角度検出器のTDC信号と機関側に取り付けた光電ピックアップ装置のTDC信号とのずれを計測,さらに角度検出器と光電ピックアップ信号を用いた燃焼解析を行い,TDC信号のずれの影響を調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
R3年度報告書で報告したように,小型機関用動力計作業が物理的に遅れていた.さらに,R3年3月末に中速機関用の水動力計の調整を行うことになったが,調整時に中速機関の潤滑油冷却器の熱交換パイプが破損し,機関内への冷却水漏入事故が発生した.予期しえない故障とはいえ,早急に修理し,水動力計の調整を終了させる必要が生じた.まず,水混じりの潤滑油により機関がさびないように機関内の潤滑油の抜き出し作業を行った.そして,熱交換機の漏水箇所の修理,機関内の潤滑油の取り出し,屋外にある冷却水タンク内の漏洩した潤滑油の回収を行った(~5月末).この後,機関内に残った水混じりの潤滑油を洗い流すフラッシングと入替により機関内に入った空気抜きの作業を行った.これは機関の規模が大きい(潤滑油量70L以上)ため.この作業にさらに2か月ほどかった. それに加え,4年生担任業務(~5月:学生の面談,6月~9月:長期実習参加する学生に関する作業)とインターンシップ調整(6~7月)が加わり,後期が始まるまでの多くの時間がそれらの作業に充てる必要があった. 後期に入り本格的に卒研生の操作完熟作業や微調整を行って,後れを取り戻そうとしたが,工学実験中に中速機関の起動弁焼損が起こり,その修繕作業が生じたこと(11~12月),卒研生の指導に関してトラブルが生じたこと,複数の学年で新型コロナ感染症に多くの学生が罹患したことが原因の学級閉鎖が生じ,その補講などの対応が~1月にかけて発生した.それに加え,12月から4年生の担任業務(学生への連絡,正月帰省に関わる作業など)および4年生の就職に関する業務(R5年から5年生担任+進路指導担当となるため)が加わり,その対応に追われてかなりの時間が消費されてしまい,動力計や燃焼解析装置の操作完熟訓練と設定や確認までしか進めることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度は従来燃料および,なたね新油の実験に着手し,できるだけ遅れを取り戻す.この課題の目的は①回転数の低い運転により燃焼期間を長く確保し,燃焼しにくい植物油の燃焼改善を図る.②水添加により噴霧の運動量を増加させて燃焼改善を図る.③添加した水の蒸発潜熱を利用して燃焼温度を下げ,①,②による燃焼改善と同時に窒素酸化物(NOX)低減を図ることである.①の効果を確認するために機関で設定できる最高回転数および最低回転数で実験することで,実験点数を減らしつつ,回転数の影響を明らかにする.同時に,できるだけ負荷の低い条件(空気過剰率が高い条件)とできるだけ負荷の高い条件(空気過剰率が低い条件)での実験を行い,植物油中の酸素分子が燃焼に寄与する影響をについて明らかにする. 本年度は5年生担任兼就職担当であるため,特に年度前半は就職関係業務に加え,中型機関の修理(7参照)の時間も必要であり,実験を進めにくい.従来燃料となたね新油の実験の合間に,遅れている水添加にかかわる乳化剤のHLB値の最適化実験を行い,年度後半に①で得られたデータと同じ条件で水エマルジョンを用いた実験を行い,②燃焼改善効果および③NOX改善効果について調査する.特に水添加を行った場合,単位時間当たりの噴射量中の燃料の割合が少なくなり,着火遅れ期間が長くなることで急激な燃焼が増加するか,逆に燃焼状態が悪化するかを明らかにする.これら実験における燃焼室内のカーボンの堆積状態を調査,堆積物の化学分析を研究分担者が行う.それらと燃焼解析により得られた燃焼特性値や排気性能と比較することでは舶用ディーセル発電機を利用したNOX低減効果を損なわず,熱効率低下とPM増加を最小限とした廃食用油再資源化の可能性について明らかにする.
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Causes of Carryover |
R4は動力計と燃焼解析装置が納入され,ガス分析器も等に問題がなく実機実験へ移行する予定であった.しかし,学生実験用機関の潤滑油冷却器の熱交換パイプが破損し,それの修理と潤滑油の交換,機関内のフラッシング及びエア抜き作業,流れ出た潤滑油の処理等に前期の大半の時間をとられることになったうえ,さらに機関の起動弁が故障し,修理および交換準備に時間を割くことになった.それに加え,後期は4年生の担任業務と4年生長期実習にかかわる業務,R5年度に5年担当となるために就職にかかわる業務が加わり,新型コロナウイルス感染症による休講した授業および遠隔への対応が重なることで,予定した実験の大半を行うことができなかった.そのため,菜種油は価格高騰による影響を最小限とするため購入したものの,実験を行うのに必要な耗品の購入が部分的なものに終わったこと,実験が進まなかったことで,R3年報告書に書いたガス分析器の故障した場合の対応費がそのまま繰り越されることになった.ガス分析器の整備費はR3年度で報告したように,予算を有効に使用するため無理に整備作業をせず,この課題遂行中に発生した故障修理または確実に遂行できる状況が担保できる適当な時期に整備作業を行う予定である.
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