電場印加にて熱伝達が大幅に向上する脂肪酸分子を含む油性媒質と金属体との界面構造

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K04524
• Research Institution: Fisheries Research and Education Agency
• Principal Investigator: 田村 賢 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 准教授 (20367832)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 電場印加 / 脂肪酸 / 熱伝達向上

Outline of Annual Research Achievements

それぞれ異なる温度に保った2つのステンレス蓄熱体で脂肪酸を挟み込み，ステンレス蓄熱体に電場を印加したときの非定常伝熱の測定と数値シミュレーションの併用により油層の熱伝達を評価する実験・解析系を開発し，本課題の研究を推進している。本研究の目的である「電場印加による熱伝達向上メカニズムの解明」について，金属表面（伝熱面）の性状の違いが電場印加時の伝熱特性に特異な変化を与えることに着目して実験を進めている。本年度は伝熱面の表面分析の準備を行った。X線光電子分光法（XPS）を用いた外部委託の表面分析サービスに出す試料の検討を行い，作製を試みた。表面粗さを再現性良く均一にする手技を獲得し，表面酸化被膜の成長の再現性（表面の反射率にて）も確保した。また，走査型電子顕微鏡（SEM）に新たに提案する独自の改造を施して手元での簡易的な表面分析を行うためのSEM中古機材の導入を検討したが，実験室のスペースや価格と性能を検討した結果，今年度での導入には至らず，次年度の検討事項としている。
今後，電場印加時に特異な伝熱挙動を示す表面処理サンプルの表面性状の詳細な評価を行うために予定通り外部の分析機器を利用して複数種の試料の組成分析を行う。また，手元で安価かつ短期間に伝熱表面の性状評価が行えるように電気化学的な手法を検討し，脂肪酸分子の伝熱面での挙動を明らかにして，電場印加による熱伝達向上メカニズムの解明を目指す。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

実験による研究を推進するうえで，試料の作製，分析技術の確立は最も重要である。本年度は伝熱面の表面分析の準備を行った。X線光電子分光法（XPS）による分析が必要であるので分析依頼に出す試料の検討を行い，試料の作製を試みた。表面粗さを均一な状態で再現できる研磨条件を検討し，その手技を確立した。表面酸化被膜の成長の再現性（表面の反射率にて）を確保した。また，独自の改造を施して手元で簡易的な表面分析を行うための走査型電子顕微鏡（SEM）の導入を検討した。予算内で最も適した実験装置を導入するために中古機器（導入可能な機器が限定される）の導入を前提に計画を進めている。本年度は実験室のスペースや価格と性能など，諸々の条件を熟慮した結果，導入には至らず，次年度の検討事項となっている。

Strategy for Future Research Activity

本年度は，伝熱表面の電気化学的特性の評価のために独自の小規模な改造を施した中古の走査型電子顕微鏡（SEM）を用いることを検討したが，予算と購入可能商品の兼ね合いから導入が困難であると判断した。実験計画上，SEMの真空部の破損や汚損を起こす恐れがあることから，大学共同利用や産業技術センターなどでの借用品の使用は避けるべきと考えられる。したがって，本研究では，試料表面の電気化学的性質に直結する表面被膜の化合物成分についてはX線光電子分光法（XPS）を用いた分析を行い（分析サービスを利用）確認していく。電気化学的な手法で伝熱面の表面性状の違いについての評価を試みる。

Causes of Carryover

消耗品費は他予算によってまかなえたため。また，試料の表面分析に電子線を用いた分析機器の使用が検討され，中古機材の導入を検討したが，配置スペース，価格，性能を考慮した結果，導入には至らなかったため。次年度に改めて必要機器の整備を行う。