2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04540
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
浅野 真誠 近畿大学, 産業理工学部, 准教授 (80408707)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新しい実在論 / 分化現象も出る / クラスタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)認識論的意思決定理論の構築と(2)社会モデルの提案を目的としており,新しい実在論の視点から社会科学における認識論的意思決定理論の重要性と数学的枠組みを検討している.新しい実在論は、存在の概念を現象することと捉え,多元的実在を認める。この理論は,意思決定の背後にある文脈を直接的な記述対象とする認識論的意思決定理論の重要性を示す.既存の意思決定理論(ゲーム理論とその周辺理論)は期待効用仮設は確率論に則った合理的意思決定を基礎とする.対して認識論的意思決定理論は合理性と非合理性を超えたメタな視点を基づかなければならない.研究代表者はその理論構築に必要な数学的枠組みに非可換確率論が有効であると考えている.非可換確率論は主に量子力学が興味する微視的現象の記述に用いられてきたが、その状態表現にある〈重ね合わせの状態〉という特異な概念は,環境との相互作用により様々な性質を形成し得る系の潜在性を捉えている.確率論や統計学が扱う観測事実の頻度とは異なり、人間は潜在性を観測以前の場に認識する.この認識は不確実性下の意思決定の文脈において極めて重要である.代表者は認識論的意思決定理論の構築を目指す上で、“分化”と呼ばれる現象に注目している.なぜなら分化現象は一般的に,系がもつ顕在性の時間的推移として理解できるからである.代表者は以前より分化現象についての数理モデルを研究しているが、当年度は改めてこれを検討し直し、国際会議(QBIC)にてその内容を発表した.また、個体の集まりを分類のために分割する行為(クラスタリング)にも注目している.クラスタリングでは、個体が有する顕在性ついての類似度が問題にされるからである.代表者は個体間類似度を量子エントロピーを応用して定式化し,これによる新しいクラスタリング手法を検討した.その内容は国際ワークショップ(QPIDA)にて発表されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況は「やや遅れている」と判断される.現時点では依然,2021-2022年度に計画されていた「意思決定過程の定式化」の段階にある.ただしこの段階は第一の研究目的「認識論的意思決定理論の構築」に不可欠であり,以降に展開される第二の研究目的「社会モデルの提案」に係る計画「社会秩序形成の定式化」の土台に位置付けられているので,慎重に進められている。その中で分化現象の数理モデルや,クラスタリング手法に関する研究という,当初の計画にはなかった新たな視点が生まれている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の現在の進捗状況は「やや遅れている」としたが,今後の展開の障壁となる理論上の大きな問題はない.むしろ分化現象の数理モデルの検討、新しいクラスタリング手法の提案という、当初の計画になかった視点を得て、第一の研究目的「認識論的意思決定理論の構築」に向けての道筋がより明確なものとなった.これらの研究に関しては論文投稿を予定しており,第二の研究目的「社会モデルの提案」に向けた計画「社会秩序形成の定式化」は加速的に進むと予想している.秩序形成の本質は協働性の向上と対立性の減少にある。計画では、2つの秩序形成の過程が議論される。1つは制度による秩序形成である。これは、社会的相互作用自体を調整して、協働的な信念を強め、対立的な信念を弱めることに対応する。一般に、社会的相互作用の構造が複雑になるにつれて、最適な調整を見つけることは困難になると考えられる。認識論的意思決定理論に基づく社会モデル(信念の網モデル)では、この問題が数学的に解析される最適化問題として提示される。もう1つは習慣としての秩序形成である。これは、人間の意識を協働的な信念に向かわせる経験的な学習に対応する。学習過程の定式化は、認識論的意思決定理論の学習モデルへの応用に位置付けられ、創出される。
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Causes of Carryover |
前年度同様, 国内の学会旅費と国際学会旅費に支出される予定であったが,コロナ渦の影響により困難となった.未使用額は次年度の研究会、学会旅費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)