2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K04540
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
浅野 真誠 近畿大学, 産業理工学部, 准教授 (80408707)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新しい実在論 / 分化現象モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)認識論的意思決定理論の構築と(2)社会モデルの提案を目的としており,新しい実在論の視点から社会科学における認識論的意思決定理論の重要性と数学的枠組みを検討している.新しい実在論は存在の概念を現象することと捉え,多元的実在を認める。この理論は意思決定の背後にある文脈を直接的な記述対象とする認識論的意思決定理論の重要性を示す.研究代表者は認識論的意思決定理論の構築に非可換確率論が有効であると考えている.非可換確率論は量子力学の数学的基盤として知られるが,その状態表現(重ね合わせの状態)は環境との相互作用により様々な性質を現象し得る系の〈潜在性〉を捉える.潜在性の認識は意思決定主体の自己意識に内在する,そしてそれは観測を通じて見積もられる確率の概念と明確に区別される.2023年度,代表者は健康科学の研究者と協同してひとつの実験を考案した.それは、眼疾患に関連する視覚条件が障害物回避運動に及ぼす影響を検証するとともに,環境情報の不確実さ(潜在性)の認識において被験者が感じる不安度を調査するものである.また、代表者は認識論的意思決定理論の構築を目指す上で“分化”と呼ばれる現象に注目している.分化は環境の影響下で系の状態が確率的に分岐してゆく過程であるが,その背後には系がもつ潜在性の時間的推移であり,このような認識は量子力学が問題にする量子デコヒーレンス過程の描像に結びつくと考えている.以上の視点に基づく理論研究もおこなっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況は「やや遅れている」と判断される.現時点では「意思決定過程の定式化」の段階にある.意思決定過程の定式化は第一の研究目的「認識論的意思決定理論の構築」に不可欠であり,以降に展開される「社会モデルの提案」「社会秩序形成の定式化」の土台に位置付けられているので,慎重に進められている。その中で他分野の研究者と協同して意思決定実験をおこなうなどの当初の計画にはなかった取り組みもおこなっている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の現在の進捗状況は「やや遅れている」としたが,今後の展開の障壁となる理論上の大きな問題はない.むしろ2022年度におこなった分化現象の数理モデルの検討、新しいクラスタリング手法の提案という新たな視点を得たこと、2023年度におこなった他分野の研究者と協同した研究を通じて、第一の研究目的「認識論的意思決定理論の構築」に向けての道筋がさらに明確となったと言える.今年度、第二の研究目的「社会モデルの提案」に向けた計画「社会秩序形成の定式化」を加速的に進める.
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Causes of Carryover |
国内の学会旅費と国際学会旅費に支出される予定であったが,研究計画の施行がやや遅れていることにより、困難となった.未使用額は次年度の研究会、学会旅費に充てることとしたい。
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Research Products
(3 results)