2022 Fiscal Year Research-status Report
高調波ノイズを考慮して CAN の性能・信頼性を評価する新しい確率モデルの検討
Project/Area Number |
21K04551
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福本 聡 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (50247590)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CAN / 高調波ノイズ / 評価モデル / ハイブリッド通信プロトコル / バス・エンフォーサ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,標準車載ネットワーク CAN(controller area network) を想定して,高調波ノイズに起因する過渡故障に対処した「ハイブリッド通信プロトコル」および「バスエンフォーサ」などの能動的な高信頼化技術が提案されている.本研究では,それらの技術の有効性を評価するための数理的評価モデルを構築する.三つの研究項目,(a) 高調波ノイズによるビット誤りを記述する基礎的確率モデル,(b) CANハイブリッド通信プロトコルの評価モデル,(c) CANバスエンフォーサの評価モデル,について取り組む. 2022年度には,2021年度に引き続き,研究項目(a)のモデル記述と評価尺度導出をおこない,つぎに,研究項目(b)と(c)のモデル記述を検討した.具体的には,高調波ノイズによるビット誤りを考慮した確率モデルを再構築するための検討をおこなった.故障モデルとして,昨年度と同様にネットワークのデータリンク層に現れる情報ビット誤りを前提とした.すなわち,高調波ノイズが引き起こす物理層の信号値の歪みが論理値の誤りと認識されたものを確率モデルで考察した.解析で扱った評価尺度としては,エラー処理オーバヘッド,メッセージ応答時間などであるが,CANバスへの高調波ノイズによるビット反転メカニズムの非対称性を新たに考慮した.研究項目(b)では,FECモードがもたらす実質的な通信速度向上の数理的な評価に先がけて,シミュレーションと実測による準備をおこない,そこまでの成果を発表するようにまとめた.研究項目(c)においても,多対多のノード間通信における性能・信頼性を解析するモデルのための基礎的な検討をおこなった.モデルのねらいは,バス電位矯正による誤り回避の成否を考慮したメッセージ応答時間を明らかにすることであり,昨年度に引き続きその準備としての実測評価をおこなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,2021年度に続いて上記の研究項目(a)のモデル記述と評価尺度導出および故障モデルの再検討をおこない,一定の成果を得た.また,研究項目(b)と(c)のモデル記述も再検討したが,何れもシミュレーションと実測による準備にとどまった.ビット誤りについての根本的なメカニズムの解明に注力したためである.数理モデルの構築が今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては,研究項目(a)の評価モデルにおいて,単一ビット誤りに加えて連続的なビット誤りの影響を誤りの非対称性を考慮しながら記述する.続いて,研究項目(b), (c) の実験とシミュレーション結果を反映した数理モデルの記述を試みる.研究項目(b)では,研究項目(a)のビット誤りの非対称性を考慮した評価モデルをベースに,多対多のノード間通信におけるメッセージ応答時間を数理的に解析するモデルを検討する.これによって,FECモードがもたらす実質的な通信速度向上の数理的な評価を可能にする.また,実装による検証が難しい,FECモードによる信頼性向上とアプリケーション層のオーバヘッドとのトレードオフの定量的評価モデルを検討にする.研究項目(c)においても,研究項目(a)のビット誤りの非対称性を考慮した評価モデルをベースに,多対多のノード間通信における性能・信頼性などを解析するモデルを検討する.
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Causes of Carryover |
2022年度には,コロナ禍の影響で,対面による成果発表を予定していた国際会議への参加がオンライン参加となり,旅費及び参加費の支出が変わったためである.次年度使用額が生じたのは主にその影響である. 2023 年度では,多くの国内外の会議がハイブリッド開催となる見込みである.昨年度に生じた次年度使用額と本年度交付額を合わせた予算を成果発表のための旅費及び参加費に配当する計画である.
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