2021 Fiscal Year Research-status Report
層状サンプラーを用いた簡易な手袋内の手表面ばく露濃度測定方法の開発
Project/Area Number |
21K04563
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
青木 隆昌 九州工業大学, 健康支援・安全衛生推進機構, 准教授 (50822813)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮内 博幸 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (90784025)
山本 忍 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (70761469)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 化学防護手袋 / 有害化学物質 / 透過速度 / 経皮吸収 / パッシブサンプラー / ばく露濃度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学工場では,化学物質の経皮吸収による労働者の健康被害が報告されている.作業中の皮膚吸収を防ぐためには適切な化学防護手袋の着用が必須である.化学防護手袋は,各製造元により耐性のある化学物質名称や使用時間の目安が示されており,その根拠となる耐性試験は日本産業規格であるJIS T8116-2005により行われている.しかしながら,その耐性試験では,一部の材料片による試験が行われるため,手袋の部位ごとの厚さの違いや作業中の伸縮による,手袋内における透過速度のばらつきまでは考慮されていない.そこで本研究では,①層状サンプラーを用いて厚さの違う手袋各部位における透過速度の違いを明らかにするとともに,②実際の作業中における層状サンプラーによる透過速度の測定を行い,手の動きに伴う手袋伸縮による透過速度の変化を明らかにし,③層状サンプラーを用いた簡易な手袋内の経皮ばく露測定方法の開発を試みた. 2021年度は,「①層状サンプラーを用いて厚さの違う手袋各部位における透過速度の違いを明らかにする」ため,透過試験装置の構築,装置内のガス吸着による濃度減少を考慮した試験ガスの目標濃度安定供給条件の検討および実測確認を行い,供給条件を得て,実験環境を整備した.また,先行研究から透過速度を測定する部位の決定を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は,担当業務である大学全体の安全衛生管理における新型コロナウイルス感染拡大防止対応業務の増加により、大幅な研究時間の減少となった.加えて,感染拡大の終息が見通せない状況から,実験場所として予定していた産業医科大学への行き来の制限,時間的制約を回避するため,透過試験装置を主実験者である九州工業大学内に再構築し,実験を迅速に進める環境整備を行った.具体的には,九州工業大学の作業環境測定実験室の局所排気装置内に透過試験装置一式を構築した.透過状況を見る試験ガスであるトルエンガスは,透過試験装置内での吸着による濃度減衰を考慮した調整が必要なことから,再構築した透過試験装置内における目標濃度(50ppm)設定条件の検討をガス検知管を用いて行い,ガス発生装置,および希釈ガス流量の設定条件を得た.2022年度早々に実験を開始できる. 一方で,作業状態における手袋透過状況確認に使用するロボットアームについて,当初予定していた市販品が急遽販売中止,後継機も発売延期となり,購入実現が不透明となったため,ロボットアームの自作を本学技術部職員とともに進めている.薄手の手袋の稼働をクリアし,厚手の手袋に耐えうる出力を得るため,モーター部の改良を進めている.2022年7月頃までの完成を目指しており,当初予定どおり,2022年度中に実験を開始できる見込みである.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得た試験条件を基に,2022年度は,各種化学防護手袋の部位別透過試験を行い,①層状サンプラーを用いて厚さの違う手袋各部位における透過試験を行い,実測結果の検討を行う.また,自作ロボットアームを完成させ,試験条件の検討,設定確認を行い,自作ロボットアームを用いて各種化学防護手袋の作業状態における層状サンプラーによる透過試験を行い,②実際の作業中の手の動きに伴う手袋伸縮による透過速度の変化について検討を行う. 2023年度は,2022年度に得た①②の知見を基に、③層状サンプラーを用いた簡易な手袋内の経皮ばく露測定方法の開発について検討を行う方針である.
|
Causes of Carryover |
購入を予定していた市販のロボットアームが,急遽販売中止,後継機も発売延期となり,購入できなかったため,進行中の自作ロボットアームの材料費執行にとどまったこと,予定していた学会参加旅費がオンライン参加により参加費のみの支出となったことにより,予定した助成金の執行ができなかったため,翌年度の助成金として請求した. 翌年度分として請求した助成金は,今後のロボットアームの作製費用,および本研究テーマと関連の深い化学防護手袋研究会の参加旅費とする予定である.
|