2022 Fiscal Year Research-status Report
Fire hazard induced by multi-component liquid fuel spilled on a room
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21K04578
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
岡本 勝弘 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (40356176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 石油系溶剤 / 石油系燃料 / 引火性液体 / シンナー / 飽和蒸気圧 / 蒸発速度 / 火災 / 燃焼実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年7月に京都市で発生したガソリン使用の放火事件を受け、同様の事案の発生を抑止しガソリンの適正な使用を徹底するため、消防法令が改正され、携行缶での販売が規制された。一方、ライター用燃料、工業ガソリン等の液体可燃物は、その引火性や揮発性の高さから、放火に使用されればガソリンと同様の被害を生じさせる可能性があるにもかかわらず、依然、容易に入手可能な状態であり、これら液体可燃物が使用される火災発生の潜在的リスクが我々の社会生活に不安を与えている。本研究では、工業ガソリンや塗料用シンナー等の多成分系液体可燃物が室内に拡散した場合における火災危険性として引火性・燃焼性・揮発性に着目し、実験的検討を行うことにより、これら液体可燃物に対するリスクマネジメントに有用な情報を収集する。さらに、独自の蒸発拡散モデルを提唱することにより、安全工学実務への即応が可能となる危険性予測手法の開発を目的とする。 令和3年度は、石油エーテル、ベンジン、ホワイトガソリン、ラッカーシンナー、塗料用シンナーの5種の石油系溶剤について、蒸気圧測定及び蒸発速度測定を行うことによって蒸発特性データの収集を行った。また、蒸発による成分組成変化を明らかにした。さらに、引火点の予測モデルを提唱し、提唱したモデルの検証を行った。 令和4年度は、3種類のホワイトガソリン及びライター用オイルの4種の石油系液体燃料について、蒸発特性データの収集を行った。また、蒸発変性試料のGC/MS分析を行うことによって、蒸発の進行による成分組成の変化を明らかにするとともに、得られた蒸気圧データ及び成分組成から引火点を予測した。さらに、前記試料に自動車ガソリンを加えた10種類の石油系液体可燃物について、床面散布燃焼実験を実施することによって、これら液体可燃物が散布・漏洩した場合における火災危険性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 当初想定していた成果 本研究で提唱した蒸発拡散モデルの入力データとする目的で、石油系液体可燃物4種類の飽和蒸気圧及び蒸発速度測定を行い、代表的な石油系溶剤の蒸発特性データを収集することができた。また、実験試料の蒸発変性試料を作成し、これらのGC/MS分析を行うことによって、蒸発の進行による成分組成の変化を明らかにした。また、床面散布した石油系液体可燃物の燃焼実験を行うことにより、これら液体燃料による火災発生時の火災危険性評価のために必要な各種データ(火炎温度、火炎高さ、周辺熱流束)を収集することができた。 (2) 当初想定していなかったが副次的に(あるいは発展的に)得られた成果 石油系液体可燃物の燃焼実験により得られた火炎周囲における熱流束データを活用して、人体に対する火傷予測を実施することにより、これら液体燃料の取扱作業従事者に対する火災リスクを見積もることができた。 (3) 当初想定していたが得られなかった成果 燃焼実験における火炎高さについては、実験映像から火炎先端高さを自動で読み取ることによって計測したが、塗料用シンナーの燃焼実験においては、塗料用シンナーの引火性及び燃焼速度が低いために、点火直後の火炎高さを自動で読み取ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる令和5年度は、床面散布した石油系液体可燃物の蒸発拡散実験及び散布液体から発生した可燃性混合気に対する着火実験を実施し、石油系液体可燃物の揮発性に起因する火災危険性について検討を行う。 石油系液体可燃物を用いた蒸発拡散実験及び発生蒸気に対する着火実験の実施については、研究協力者の市川俊和、山﨑宏樹、松岡裕典及び佐伯良治が担当する。 令和6年度以降は、室内に拡散した石油系液体可燃物の火災危険性評価を引き続き行うともに、CFDを用いた拡散挙動予測手法についての検討も行う。CFDによる予測手法については、妥当性の検証を行いながら、試行錯誤法により最適な計算条件を決定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大の影響により、実験計画の一部に遅滞が生じ、さらに、成果発表を計画していた国際学会(Fire and Materials 2023)が中止となったことから、次年度使用額が生じたものである。 令和5年度は、次年度使用額を用いて、前年度に未執行であった携帯型ガス検知器及び熱流束計を購入する予定である。本年度分として請求した助成金900千円については、ガソリン蒸発拡散挙動解析用PC購入費として200千円、研究成果発表用の海外及び国内旅費として500千円、石油系溶剤の火災危険性検証実験にかかる消耗品費として100千円、英文論文執筆時の英文校閲費用として50千円、論文投稿費用として50千円を支出する予定である。
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