2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the influence of propellants in cartridges on the rifling marks for the identification of the bullets.
Project/Area Number |
21K04579
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
新井 裕之 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (70356179)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発射痕 / 弾丸類 / 異同識別 / 火薬類 / 発射薬 / 部分燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
銃器を使用した事件が発生した場合、発射された弾丸や薬きょうに、発射痕と呼ばれる,個々の銃器に特有の痕跡が印象されることを利用して、銃器の異同識別鑑定を行っている。しかし、同じ銃器を用いたとしても、実包内にある火薬類の状態や組成等が異なることで、異なった痕跡が印象されることが、異同識別鑑定を行う際の問題となっている。そこで本研究では、実包内の火薬類が、弾丸や薬きょうに印象される痕跡に与える影響を把握することを目的とする。 弾丸の発射には,発射薬の燃焼で発生するガスを利用しているため,初年度である2021年度は,薬きょう内での発射薬の燃焼挙動の把握を行った。発射弾丸の底部に印象された痕跡のうち,発射薬由来と考えられる痕跡を詳細に観察したところ,その形状や大きさ等から,発射薬が未燃焼のまま又は部分燃焼の状態で,薬室内を高速で飛翔していることが推測された。また,痕跡の一部と,弾底部に付着した溶融物の蛍光特性の観測から,発射薬の一部は,弾底面に付着した状態で燃焼したり,微小破片に破壊されたりすることが判明した。発射直前の薬室内での発射薬の位置により,同一拳銃・同一実包であっても,弾速が異なる結果から,薬室内での発射薬の燃焼過程の違いが,弾丸の挙動特性に影響を及ぼしていることが考えられた。 得られた成果の一部は,日本法科学技術学会第27回学術集会にて報告をした。また,火薬学会2022年度春季研究発表会にて報告を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薬室内で発射薬が燃焼した際に発生するガスの圧力上昇が,弾丸を推進させ,その際に弾丸に発射痕を印象させるとともに,薬きょうのきょう底面にかかる反作用が,薬きょうに発射痕を印象させることから,薬きょう内の圧力に関する各種パラメータの取得が,発射痕への影響評価に不可欠と考える。当初,2021年度は,密閉された空間内の火薬の燃焼による圧力計測システムの立ち上げを計画しており,そのために,ロケット発射薬の研究を行っている大学での,圧力計測手法を取り入れる予定としていたが,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,2021年度は大学構内への部外者立ち入りが非常に制限されたことで,情報交換がほとんどできず,圧力計測システムの立ち上げに至らない結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,薬きょう内を模擬した空間で発射薬が燃焼した際の,発生ガスの圧力の時間挙動を計測し,弾丸及び薬きょうに印加される力の検討を行う。 また,同一拳銃・同一実包を使用して撃発した際に,弾速が同一であった場合の弾丸類と,弾速が異なった場合の弾丸類に印象される発射痕への差異を,異同識別鑑定で用いる検査手法を利用して捉え,発射薬による発射痕への影響評価を行う。 さらに,実包内には,火薬類として発射薬のほかに,雷管があることから,雷管のみで撃発した際の,薬きょうに印象される発射痕を観察することで,発射痕に対する雷薬の影響評価を試みる。
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Causes of Carryover |
密閉された空間内の火薬の燃焼による圧力計測システムの立ち上げのための調査を,ロケット発射薬の研究において,同様の火薬類の燃焼圧力計測を行っている大学に赴いて行う予定であったが,2021年度は,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,大学構内への部外者立ち入りが制限されたことから,システム構築予算の執行ができず,次年度使用額が生じたものである。 2022年度に,システム構築のための物品費,システムの調査及び対面開催される学会での成果発表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)