2022 Fiscal Year Research-status Report
被災者主導の住宅移転再建メカニズムの解明と復興市街地の空間的・社会的評価
Project/Area Number |
21K04594
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
柄谷 友香 名城大学, 都市情報学部, 教授 (80335223)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 住宅再建 / 生活再建 / 自閉症スペクトラム症(ASD) / 東日本大震災 / 広域巨大災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東日本大震災後の自主住宅移転再建の実態と課題を解明し、広域巨大災害における持続可能な住宅復興戦略と支援制度の提案と実装を目指す。今年度は、地震・津波による被災地に加え、原発避難を余儀なくされた福島県沿岸部および避難先のいわき市を対象とした。また、自主住宅移転再建を促す1要因として、障害をもつ子供の家族に焦点をあて、以下の研究内容を検討した。 まず、双葉郡からいわき市に避難する自閉症スペクトラム症(ASD)児とその家族を受け入れ、持続可能な療育支援を実践した障害福祉施設を調査した。また、長期かつ広域に原発避難を強いられた施設につながったASD児の母親へのインタビュー調査を通じて、仮住まい期と再定住期における困難や課題、役に立った支援やつながりについて明らかにした。 ASD児を抱える母親にとって、長期・広域かつ原発による避難は厳しさが幾重にも重なっていた。また、早期の自主住宅移転再建は必ずしも生活再建とは言えない課題も見えてきた。土地勘のない避難先で、原発避難者であることを隠し、定型発達児の母親ともつながれず、定期健診時に個別相談すらできていない。地震・津波とは異なる原発避難固有の問題も見えてきた。その中で、地元保健師による繰り返しのプッシュ型訪問事業は、孤独な母親らに相談の機会を与え、子供の発達相談や診断、然るべき支援に導いている。地元保健師を通じて、遊びの教室や施設につながり、療育支援による子供らの成長を実感でき、母親自身が発達障害への理解を深めるなど気持ちを前に向かせた。 原発避難者にとって、住宅再建は必ずしも生活再建とは言えず、12年経た現在も道半ばであった。原発避難を余儀なくされたASD児やその家族の医療・福祉支援を継続しつつ、インタビュー調査を実施し、住宅再建から生活再建に至る過程を明らかにし、得られた知見を、将来想定される広域巨大災害への対策に実装したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査から発見された新たな課題に着手したため、従来予定していた調査計画がずれ込んでしまった。具体的には、自主住宅移転再建を促す1要因として、原発避難および障害をもつ子供の存在を対象とし、調査対象エリアも拡張してきた。そのため、地震・津波による被災エリアにおけるインタビュー調査の件数が限定的となり、当初計画より進捗がやや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)調査対象エリアの変更 当初予定では、建物用地浸水率の高かった東北沿岸被災市町を調査対象エリアに設定していたが、原発影響エリアを新たに対象としたこと、また、自主住宅移転再建先の特定に予定よりも膨大な時間とコストを要するため、まずは、岩手県陸前高田市、福島県いわき市を代表エリアとして一連の作業を遂行し、可能な範囲で拡大を試みる。 2)積極的な現地調査の実施 コロナ禍および体調不良の影響により、現地踏査およびヒアリング調査などが大幅に制限された。今後は、より積極的な現地調査を実施するとともに、状況によってはZoom等を用いた遠隔調査も検討したい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍および体調不良の影響により、調査対象エリアへの現地調査の制限を余儀なくされ、国内旅費が大幅に減少した。今後の状況を見ながら、遅れた現地調査の実施を取り戻すとともに、状況によってはZoom等での遠隔調査も検討する。
|
Research Products
(2 results)