2023 Fiscal Year Research-status Report
被災者主導の住宅移転再建メカニズムの解明と復興市街地の空間的・社会的評価
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21K04594
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
柄谷 友香 名城大学, 都市情報学部, 教授 (80335223)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 住宅再建 / 生活再建 / 東日本大震災 / 能登半島地震 / 広域巨大災害 / 被災地支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大規模災害後の自主住宅移転再建など多様な住宅再建過程を解明し、広域巨大災害における持続可能な住宅復興戦略と支援制度の提案と実装を目指す。今年度は、自主住宅移転再建との比較のため、過去のインタビュー記録をもとに東日本大震災後の地域主導型防災集団移転プロセスについて整理を行った。また、本研究で得られた知見を活かすため、令和6年能登半島地震を対象に加え、地元協議会の協力を得て住宅再建調査を実施し、比較データの蓄積に努めた。 1)地域主導による防災集団移転プロセスの実態と課題:防災集団移転を実現した大船渡市3地区の復興委員会メンバーを対象とし、東日本大震災後5年目にはインタビュー調査を実施した。これによれば、避難所滞在の早い時期に発足しており、適地選定から地主との交渉、複数案に対する意向調査まで、復興委員会が担っている。特に、自主住宅移転再建や災害公営住宅など住宅再建の方針を迷う被災者に対しては、度重なる意向調査を実施するなどフレキシブルな対応を行ってきた。一方、移転先が決定した後の区割やその決め方は地区の自治会に任せるなど、住民組織間での役割分担が特徴的であった。住民主導による防災集団移転計画は早期に策定されており、学識経験者や専門家の役割は計画を実現していく上での住民参加型ワークショップの開催や行政との交渉役であった。 2)令和6年能登半島地震後の住宅再建過程に関する基礎データの収集:能登半島地震から3カ月後、七尾市能登島5集落を対象として住宅再建調査(外観8段階評価)を実施してきた。この調査は、本研究で蓄積されたノウハウの実装であり、集落再生のキーパーソンである地元協議会の協力を得て行ってきた。約3カ月ごとの継続的な調査を予定しており、得られたデータを被災集落の復興に活かすとともに、東日本大震災後の住宅再建過程との比較検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域主導による防災集団移転の実態と課題を整理したところ、当初の仮説であった「自主住宅移転再建の方が防災集団移転より住民の生活再建感が優れている」は必ずしも成立しないことが見えてきた。防災集団移転の事業実施は行政主導を想定していたが、適地選定から住まいの再建方法、区割の意向調査まで地域主導で行ってきたパターンが抽出できた。今後は、行政主導の防災集団移転のケースを探索し、キーパーソンへのインタビューを進める予定である。また、本研究で得られた知見を令和6年能登半島地震の被災地に還元(地元との共同調査、講演会等)できたことは1つの成果と言え、東日本大震災との比較検証のため今後の継続を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
陸前高田市など行政に対するヒアリング調査を通じて、地域主導型・行政主導型など防災集団移転プロセスのパターンを抽出するとともに、対象エリアの追加選定を行う予定である。令和6年能登半島地震からの復旧・復興に向けた助言や講演会などは次年度以降も継続し、本研究で得られた知見に基づく被災地支援につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査時期が遅れたため、先送りにしたデータ入力作業を謝金として計上する予定である。
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[Book] 復興を描く2023
Author(s)
土木学会誌編集委員会
Total Pages
300
Publisher
公益社団法人土木学会
ISBN
978-4-8106-1056-7