2021 Fiscal Year Research-status Report
根系の発達動態と立木による流木被害軽減機能の実証的解明
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21K04601
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
岡田 康彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50360376)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 立木 / 根系 / 流木 |
Outline of Annual Research Achievements |
購入時の苗齢が1年、2年、3年のケヤキ、センダン、ヤマハンノキを植樹して1年が経過した時点での平均の樹高と地際直径を算出した。その結果、3年生苗として購入したケヤキからはその他と較べて相当大きな値が得られたほか、樹高と地際直径では樹種間の関係が等しくならないことが示された。植栽時の苗齢が1年生、2年生のものは幹曲がりが相当量発生したのに対し、3年生のものは幹が通直に伸張しており、安定して成長してことがわかった。 立木の伐採から1年後、2年後、4年後、7年後、8年後のスギ根株を対象にしてその周囲にトレンチを切り、表出した根に対して引き抜き抵抗力測定試験を実施した。その結果、いずれの年数においても、引き抜き抵抗力の最大値は引き抜く根の直径の冪乗関数として表現可能であることを示した。これらの値を基に斜面崩壊の潜在的なすべり面に位置する根が発揮する補強強度を算出し、根による補強強度が伐採からの年数経過による腐朽に伴って低減する変化をモデル化した。 立木が発揮する転倒抵抗モーメントを力学的に相似条件で再現した水路模型に、流木を含む土砂を流下させる土石流捕捉の実証実験を実施した。流木模型は幹に枝と根がついている形状を模したものも使用し、枝と根の無い幹だけの模型を用いた実験の結果と比較検討した。その結果、立木の転倒および流出については流木の枝や根の有無の影響はあまり認められなかったのに対し、流木の捕捉に関しては枝や根の有無の影響が大きいことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
購入時の苗齢が1年生、2年生、3年生のケヤキ、センダン、ヤマハンノキを植樹してその生長を観察し、1年が経過した時点での平均樹高と地際直径を調査した。その結果、植栽時の苗齢が1年生、2年生のものは幹曲がりが相当発生して生長が阻害されているのに対し、3年生のものは幹が通直に伸張しており安定した生長が確保されること、3年生のケヤキは、センダンやヤマハンノキよりも平均の樹高および地際直径が相当程度に大きいという樹種間の特性の違いを示した。 根系による斜面補強効果に関して、根の引き抜き抵抗力は根の直径の冪乗関数として表現可能であることを示すと共に、根株の伐採からの年数経過に伴う根の斜面補強の低減をモデル化した。また、立木による流木を含む土石流の捕捉に関する実証的な水路実験研究においても、立木の転倒や流出に関しては、流木模型の形状(枝や根の有無)の影響が認められないのに対し、流木の捕捉に関しては、流木模型に枝や根の影響が大きいことが示しており、研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
ケヤキ、センダン、ヤマハンノキの生長を引き続き継続して観察する。研究課題の最終年度となる令和5年度には、各樹種に関して根の分布と量の計測を行うことにより、各々が有する斜面補強に関する防災特性を検討する。 根系が発揮する斜面補強効果を組み込んで斜面の危険度評価を行うために、鉛直根のみならず、水平根や射出根の効果を導入して斜面の安定度を数値化する解析モデルの構築に取り組む。また、水路実験を継続し、立木による流木を含む土石流捕捉機能を最大化するための立木本数密度、太さ、その組み合わせ等について実証的に研究を推進する。
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Causes of Carryover |
研究は全体として概ね順調に進展してきている。3月末に予定していた学会発表に関して、現地での対面が無くなりオンラインのみでの開催となったことを受けて27,333円の繰越額が発生した。この繰り越し金額は、令和4年度に開催される関連学会のシンポジウムなどに積極的に参加して情報収集を実施することに使用することとして研究を推進する。
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Research Products
(6 results)