2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K04604
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中田 令子 東北大学, 理学研究科, 助教 (00552499)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宮城県沖地震 / 長期評価 / 地震サイクルシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
次の宮城県沖地震発生時期について、多数の数値シミュレーション結果をもとに今後起きうるシナリオを絞り込み、地震発生予測や地震発生過程の理解、さらには地域防災に役立つ知見を得ることを目的として、プレート境界で発生する地震の繰り返しを、プレート相対運動からのずれの蓄積と解放過程としてモデル化し、先行研究 [Nakata et al., 2016]と同様のすべり速度・状態依存摩擦則、断層の構成則、強度の時間発展則を用いた地震発生サイクルシミュレーションを行った。令和3年度は、構造探査に基づく3次元プレート境界面上に、様々な摩擦パラメタの空間分布を仮定して約20モデルの計算を新たに行った。 Nakata et al. [2016]で扱ったモデルに、2016年半ば以降これまでに新たに蓄積したモデルを加えた188モデルの結果について、宮城県沖地震の発生間隔を抽出した。Nakata et al. [2016]では、M9地震前の平均繰り返し間隔は、M9地震前200年間に発生した地震を対象としていたが、モデルによって、M9地震の繰り返し間隔が異なることから、M9地震前の4地震の間隔とすることで統一した。その結果、約250シナリオについて、M9地震前の宮城県沖地震の繰り返し間隔やM9地震後の発生時期に関して、平均値・中央値・標準偏差を求めた。 さらに、2021年3月20日・5月1日に宮城県沖で発生したM6.9・M6.8の地震の影響を検討するために、代表的なシナリオを再解析した。その結果、M9地震前後で、M>7宮城県沖地震発生過程、具体的には地震の破壊開始点と破壊伝播方向、余効すべりの空間分布に関する特徴が異なっていることが分かった。また、M>7宮城県沖地震の繰り返し間隔は、M9地震サイクルの中で変化するが、サイクルの後半には一定になってくることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2016年以降これまでに蓄積した多数のシナリオについて、数値基準を明確にして宮城県沖地震を抽出し、平均繰り返し間隔を求めた。それらをもとに、M9地震後の宮城県沖地震発生時期について、平均値・中央値・標準偏差といった統計的な情報を付加して、Nakata et al. [2016]の結果を更新することができた。その結果、先行研究とほぼ同様の結果が得られた。具体的には、M9地震とM>7宮城県沖地震をある程度説明できた251シナリオ中、232シナリオ(約92%)で M9地震と その後の宮城県沖地震との時間間隔は、過去(3回分)の宮城県沖地震の平均再来間隔よりも短いという結果が得られた。251シナリオでM9地震前の繰り返し間隔の平均は、56.93年 ± 8.135年、M9後の宮城県沖地震までの時間平均は26.41年 ±18.853年、両者の比の平均は0.47であった。 成果は国内学会で発表し、現在論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、令和3年度に得られたM9地震前後の宮城県沖地震の破壊過程の違いについて、得られた結果を取りまとめ、成果を論文にまとめ、査読付きの国際誌に投稿する。さらに、計画を前倒して、2021年3月と5月に宮城県沖で発生したM6.9と6.8の地震を再現できるように、宮城県沖地震震源域を1つの円ではなく複数に分けたモデル化を行う。具体的には、これまで半径23kmの一つの円で表していたものを半径5~10kmの3~4つの円に分割する場合や、半径の大きな円の内外に複数の小さな円を配置した階層構造 [Ide and Aochi, 2005]のような場合について、モデル化を試みる。得られたシミュレーション結果について、令和3年度と同様に、M9巨大地震前に発生した4つのM>7宮城県沖地震の発生間隔(3回分)の平均(T1)と、M9地震とそのすぐ後の宮城県沖地震との発生間隔(T2)の比(T1/T2)を抽出する。さらに、M9地震後のM>7宮城県沖地震発生時期の平均値・中央値・標準偏差・最大値・最小値などを明示する。 令和5年度は、同一のM9地震直後の応力状態から、異なるパラメタセットを用いて計算をリスタートする。得られた結果から初年度と同様の基準でT1/T2を抽出するとともに、M9地震の影響が同じ場合、摩擦パラメタが宮城県沖地震発生にどのように影響するか調べる。進捗に応じて、これまでに構築したモデルとは異なる設定(プレート形状・初期値・摩擦則・粘弾性等)を取り入れる、岩石実験等の知見から摩擦パラメタの取りうる値を絞り込み、モデル領域全体に対してグリッドサーチでパラメタセットを多数用意する、などの方法で、様々な条件で計算を実施する。 最終的には、次の宮城県沖地震発生時期に関して、統計値や地震学的考察とともに示す。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、学会や打ち合わせがほぼすべてオンライン開催になったため、旅費を使用しなかった。 令和4年度には、ポスト処理を効率的に行うため、新たなLinux Workstationの購入を予定している。また、計算結果を保存するための外付けHDDやNASの購入を予定している。
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