2021 Fiscal Year Research-status Report
Climatic influence on the formation of weathering substances as possible slope failure materials
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21K04605
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小口 千明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20312803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若月 強 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80510784)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 斜面災害 / 花こう岩 / 崩壊予備物質 / 風化指標 / 化学的風化 / 物理的風化 / 粒度分析 / 粘土シルト |
Outline of Annual Research Achievements |
土砂災害の発生予測の精度向上と減災を図るためには、あらゆる場所に適用可能かつ精度の高い風化土層発達の定量的・実用的な基本法則も考慮した指標を確立する必要がある。そのためには、崩壊予備物質である土層の物性の違いを明確にする必要がある。本研究では、斜面災害に岩石の風化と地域間比較の視点を入れ、基盤岩石-風化-崩壊という一連の物質変化と気候条件との関係を体系化することを目指している。具体的には、過去に崩壊が発生した花こう岩質岩石を基盤にもつ地域において、未風化岩から風化土層にいたる物性を気候帯別に調査し、災害への脆弱性を示す評価基準を作成することを目的として研究を進めている。 2021年度は、花崗岩・花崗閃緑岩地域の斜面を構成する土層について化学的風化指標と粒度分析との関係を調べた。石垣、広島、岩国、南木曾の各地域で過去に斜面崩壊が発生した斜面のすべり面付近から採取された試料を分析した。まず、化学組成値を基に、化学種の溶脱程度を示すCIA(Chemical Index of Alteration)と、粘土化の程度を示すSi/Al ratioなどの風化指標値を算出した。さらに、各指標と粘土率・シルト率との関係を調べたところ、一時近似で示されることが分かった。 寒冷な南木曽地域では、他の地域よりも表層土と基盤岩の化学的風化指標値の差が小さく粗粒の風化生成物割合が多いことから、相対的に物理的風化の影響が高いと判断できる。一方、亜熱帯の石垣地域では、この差は小さく細粒の風化生成物割合が多いことから、化学的風化の影響が高いことが示された。定性的には古典的な指摘されていたが、実際に化学的指標を用いて具体的に示した研究例はほとんどない。以上より、粘土シルト分などの細粒分の化学組成を求めることが、崩壊予備物質の生成程度を評価する一指標になり得ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、土層すなわち崩壊予備物質の生成から調査対象としており、そちらに関する調査はおおむね結果を得ることができた。とくに、複数の気候下に置かれた岩石を対象として、風化変質の状況とその生産物質である粘土や砂などの土質データの双方を比較考察した研究例はほとんどないと思われる。 実際に崩壊が発生した現地から土砂を採取して綿密な化学分析を行うことは困難を極めることが多いため、粘土・シルト分に着目して気候条件との兼ね合いを説明できる評価軸を持っておくことは、他の地域への応用を検討する際にも役立つと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた知見を整理するとともに、その考えを強固なものとするために、もう少し多様な気候条件下での事例を増やすことを検討している。また、風化については概ね指針を得たが、崩壊が発生し得る場所すなわち地形条件や、トリガーとなる降雨条件に関する検討は未着手であるので、今後はそのような検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、購入予定でいたスペックの物品(遠心分離機)がコロナ禍の部品調達の不都合で製造に時間がかかることが判明し、入手できなくなった。代替としてスペックの低い物品を購入して、分析作業の行った。また、コロナ禍の長期化とそれに伴う政府方針の変更で、目的に沿った内容の現地調査を行うことができなかった。したがって既に採取済みの風化岩石試料の試料調整を進めた。2022年度については、新たな試料の分析を行うとともに、地形解析についても進める。
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Research Products
(2 results)