2023 Fiscal Year Research-status Report
近年頻発する大規模土砂生産イベント後の土砂動態と河道安定化機構の解明
Project/Area Number |
21K04610
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
清水 收 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178966)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 河床変動 / 土砂移動 / 長期モニタリング / 粗粒化 / 山地渓流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2003~2023年の20年間の土砂移動経過の分析を,調査地の一つであるパラダイ川を対象に記す。調査区間(長さ1830m)全体で見た土砂移動の推移は,2003年大雨により大規模堆積,2004~2005年洗掘,2006年再び大雨により大量の洗掘と堆積,2007~2013年洗掘,2016年中規模降雨により堆積,2017~2018年洗掘であり,大雨で土砂が堆積しその翌年から洗掘が数年続くことが3回の降雨イベントとも繰り返された。 次に,小区間に分けたスケールで見ると堆積と洗掘の経過が特徴的である。2003年の大規模堆積は区間全体で生じたが,その後,上流区間では2年間の洗掘の後,2006年も大きな洗掘が発生し,それ以降は土砂移動が停止した。中流区間は2004~2005年に,上流区間から連続する一部区間で洗掘が発生したが,他の大部分では堆積が発生した。そして,2006年には大量の堆積が発生した。これら2004~2006年の堆積は,上流区間と中流区間上流部での洗掘がこの区間へ土砂を供給した結果である。そして,中流区間では,上流区間で洗掘が停止した2007年から洗掘が始まり,2009年に最も多く洗掘が生じ,その後洗掘は小規模化していき,2014年には土砂移動が停止した。以上のように,上流区間は洗掘土砂を供給することで中流区間に影響を与える。一方,下流区間は単純なパターンを示し,2004~2005年に洗掘,2006年に堆積の後,2007年から洗掘が断続的に続き,2014年から土砂移動が停止した。 堆積土砂の洗掘が数年間続いた後に停止する理由を分析した。上流区間と下流区間は新規堆積土砂が洗掘され尽くし,河道横断形が堆積前とほぼ同じ形状に戻るためである。中流区間は上昇した平らな土砂堆積面に,洗掘によって流路が掘り込まれ,またその流路床は流水の作用で粗粒化して,侵食抵抗性を獲得するためと推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた論文の作成が完了せず,作業途中のためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,当初の計画から変更して,河床変動の現地測量調査を行わないことにする。その理由は,河床変動のデータ蓄積が20年間分に達し,最近の河床変動の沈静化も考慮して,現状の河床変動のデータ量で十分と考えたためである。ただし,2024年度に大雨が発生して,新たな著しい河床変動が生じた場合には,現地測量調査を行う可能性はある。そして,2024年度の現地調査は上述の河床変動測量以外の内容に関して行う予定であるが,現地調査の規模は当初計画よりも小さくなる。 データの分析と論文作成に,より多くエフォートを注ぐ予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,事業期間1年目の2021年度において,コロナ感染拡大による現地調査の取り止めで,大きな金額の残が生じたためである。2022年度と2023年度には通常の研究活動ができたため,それぞれ当年分にあたる直接経費をほぼ全額を使用したが,2021年度に未使用であった金額がなおも残り,今回の次年度使用額となった。その使用計画としては,2024年度の論文作成に一部を使用する予定である。 また,2024年度は現地測量調査を実施しない予定のため,研究経費の未使用額が生ずる可能性が高い。その場合には2024年度末において未使用額の返還,あるいは研究の進捗状況によっては事業期間の1年間の延長の,いずれかを考えている。
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