2022 Fiscal Year Research-status Report
外部環境別経年劣化予測および累積的損傷評価に基づく予防保全型耐震性評価手法の構築
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21K04611
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
木村 至伸 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (10363607)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 剛性低下予測 / 予防保全型耐震性能評価システム / 耐震性能 / 模擬地震動の作成 / 地震動の類似性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の検討では,D16,D19,D22,D25,D29,D32鉄筋の6種を対象として,鉄筋径の相違に着目した剛性低下の推定を行った.劣化推定モデルに関しては,昨年度と同様に橋梁台帳における損傷等級区分と塩害による劣化進行過程からマルコフ連鎖モデルにより各劣化過程の遷移確率から算出した.外部環境は厳しい環境と通常環境の2水準とし,各鉄筋径に対して,断面欠損係数と経年の関係,ならびに,断面欠損係数と剛性比の関係より,外部環境別の経年劣化による剛性低下を推定した.この検討により,D16鉄筋においては剛性低下率が25%であったのに対し,D32鉄筋では剛性低下率が約13%程度と鉄筋径による相違を明らかにした.さらに,各鉄筋径に対して推定した剛性低下を用いて,経年に対する損傷拡大の推移を明らかにした.鉄筋径ごとの予防保全型維持管理シナリオの検討を行うため,剛性低下開始時期の不確定性を考慮した損傷指標に基づいて超過確率を算出し,鉄筋径ごとの橋梁修繕時期について検討した.鉄筋径の相違による超過確率の推移を確認でき,超過確率に基づく鉄筋径別の維持管理シナリオを検討した.超過確率50%に着目した維持管理シナリオでは,D16鉄筋とD32鉄筋では約15年程度異なることを示した.このように,鉄筋径毎に超過する年数を明確にすることができ,耐震性に着目した予防保全型の維持管理シナリオを計画することが可能となった. また,対象地点における地域特性を反映した模擬地震動作成の検討のため,地震動波形と常時微動波形の類似性について,KL情報量を用いた定量的な類似度評価を行った.ここでは,鹿児島県内のK-NET観測点において,過去に観測された地震動波形を対象としてKL情報量を用いた定量的な類似度評価を行い,そのバラツキの程度から常時微動波形の振動特性と相関性のある地震動波形の特徴を把握するための検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,経年劣化を考慮した社会基盤を対象に,本震のみならず波状的に作用する地震力に対しての累積的な損傷評価を行い,予防保全型耐震性能評価システムの構築を目指すものである.具体的には,(i)鋼材の腐食開始時期と進展期の残存期間の推定,(ii)外部環境別の剛性低下予測,(iii)対象地点における地域特性を反映した模擬地震動の作成,(iv)剛性低下予測を用いた社会基盤の損傷評価,ならびに,許容する損傷に対する超過確率の算出,(v)超過確率から耐震性に関する対策実施時期を提案できる評価システムを構築することである. (i),(ii),(iv),(v)の検討項目については,橋梁台帳における損傷等級区分と塩害による劣化進行過程を対応させ,マルコフ連鎖モデルにより各劣化過程の遷移確率を算出することで,劣化進行モデルの作成を行った.さらに,鉄筋径ごとに対する断面欠損係数と経年の関係,ならびに,断面欠損係数と剛性比の関係より,外部環境別の経年劣化による剛性低下を推定した.この剛性低下予測に基づいた構造物の損傷評価を行い,任意の損傷指標に対する超過確率を算出しておくことで耐震性を考慮した修繕時期の推定を行い,耐震性を考慮した予防保全型の維持管理シナリオが構築できる可能性を示した. (iv)の検討項目については,対象地点における地域特性を反映した模擬地震動作成の検討のため,地震動波形と常時微動波形の類似性について,KL情報量を用いた定量的な類似度評価を行った.過去に観測された地震動波形を対象としてKL情報量を用いた定量的な類似度評価を行い,そのバラツキの程度から常時微動波形の振動特性と相関性のある地震動波形の特徴を把握するための検討を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,経年劣化を考慮した社会基盤を対象に,本震のみならず波状的に作用する地震力に対しての累積的な損傷評価を行い,予防保全型耐震性能評価システムの構築を目指すものである.これまでに,劣化推定モデルの作成や剛性低下の推定を行い,この剛性低下予測に基づいた構造物の損傷評価を行い,任意の損傷指標に対する超過確率を算出しておくことで耐震性を考慮した修繕時期の推定を行い,耐震性を考慮した予防保全型の維持管理シナリオの構築について検討してきたが,これまでの検討は本震のみに着目した成果である.さらには,対象地点における地域特性を反映した模擬地震動作成の検討のため,地震動波形と常時微動波形の類似性について,KL情報量を用いた定量的な類似度評価を行った.これらの検討から得られた知見を基に,次年度からは,累積的な損傷を考慮した検討を実施するために余震の影響を考慮した模擬地震動を作成し,これを用いた予防保全型の維持管理シナリオについて検討する.具体的には,これまでに実施してきた常時微動観測の波形を基に,地域特性を反映させた模擬地震動を作成する.これを基に,余震活動の影響を考慮した模擬地震動を作成し,これまでの予防保全型の維持管理シナリオに反映させることを検討する.ここでは,余震の規模や震源距離に着目し,対象とする余震規模に対する余震最大加速度を距離減衰式に基づいて設定した模擬地震動を用いることで,対象とする余震に伴う損傷拡大を評価するとともに,維持管理シナリオに及ぼす影響について検討する予定である. 以上の方針により,経年劣化を考慮した社会基盤を対象に,波状的に作用する地震力も考慮した累積的な損傷評価に基づいて,予防保全型の維持管理シナリオについて検討する予定である.
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Research Products
(2 results)