2023 Fiscal Year Research-status Report
磁場角度分解超音波計測で切拓く並進対称性を失った格子系の電気四重極線形応答
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21K04622
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中西 良樹 岩手大学, 理工学部, 教授 (70322964)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超音波計測 / 近似結晶 / 結晶場 / 温度磁場相図 / 構造相転移 / Tsai型クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶と同一の局所構造が周期的に配列した準結晶について超音波計測を実施し、音速測定、超音波吸収係数をもとに系の弾性特性を決定することを本申請の目的に掲げている。特に局所構造であるTsai型クラスターが弾性特性、磁気特性、輸送特性にどの様な特徴をもたらしているのか、その電子状態および低励起状態をもとに明らかにしようとしてきた。前年度まで一般式RCd6(R:希土類)で記述される近似結晶系についてGdCd6およびTbCd6を中心に超音波計測、磁化測定を実施してきた。本年度は引き続き同型であるPrCd6、CeCd6、YCd6について広い温度範囲(室温から1.5 Kまで)、磁場領域(最大8T)にて超音波計測を実施し、その弾性特性ならびに個々の系で観測される各種相転移近傍の弾性異常について観測、解析を実施した。得られた結果をいかに列挙する。 =PrCd6=室温から最低温度1.5 Kまでの温度領域で超音波計測を実施した。150 K付近で構造相転移に起因すると思われるステップ状の弾性異常を全ての主要弾性定数(C11, 2CE=C11-C12およびC44)で明瞭に観測した。他のRCd6系では、構造相転移近傍で前駆現象であるキュリー項(温度の逆数に比例)的な温度依存性を示すのに対し、本系ではこうした前駆現象がほとんど観測されずステップ状に増加する振る舞いを見せる。他の系とは構造相転移の起源が異なる可能性を示唆している。さらに低温領域に目を向けると40 K付近から弾性定数の軟化(ソフト化)が観測された。C11およびCEでのみ観測され、C44ではソフト化が見られないことからPrの基底状態を反映した弾性異常(Γ3)であると推察される。今後、RCd6の主要弾性定数を決定し、構造相転移および低温磁気異常の発現機構についてTsai型クラスターをもとに解析をさらに進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたRCd6系の研究はGdCd6およびTbCd6のみであったが、上述したCeCd6、PrCd6そしてYCd6の系も加わり、超音波計測の実施回数が大幅に増えた。一方で寒剤(液体ヘリウム、液体窒素)の価格高騰により、低温実験の実施が非常に困難な状況に陥っている。こうした状況から、液体ヘリウムを用いる低温領域の実験はなるべく回数を減らし、液体窒素でカバー出来る温度領域の測定を中心に推進してきた。幸い、本系の構造相転移を含む温度領域は、液体ヘリウムを使用せずに到達可能であるため、研究費の出費を抑えるためにも高温領域の測定を中心に推進した。一方で、まだ測定できていない主要弾性定数が残っているため、引き続き本系の超音波計測を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、系によっては構造相転移以下の温度領域で非常に構造が不安定となり、超音波エコーが乱れる状況に直面する。そのため、これまでとは異なる測定方法(位相直交法)を用いて実施する予定である。具体的にはTbCd6のC11、CE、CeCd6のC11、CE、YCd6のC11、CEを中心に超音波計測を用いた音速測定、超音波吸収係数の測定を推進する。また、低温領域で逐次磁気相転移を示す系については胎児率、磁化測定も合わせて実施し、弾性特性、磁気特性両面から温度・磁場相図を作成し、系統的なRCd6系の研究を通して、Tsai型クラスターの電子状態を明らかにする。
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Causes of Carryover |
液体ヘリウムを中心に寒剤価格が高騰し、その対応のために低温実験が実施出来ず翌年へ持ち越された。
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[Presentation] 超音波測定で探る近似結晶 RCd6(R=Gd,Tb,Y,Ce)の構造相転移と弾性特性2024
Author(s)
伊藤優希, 神賢輔, 藤川寛大, 脇舎和平, 中村光輝, 吉澤正人, 室裕司, 中西良樹
Organizer
日本物理学会2024年春季大会
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[Presentation] Elastic properties of the 1/1 Tsai-type quasicrystal approximant GdCd6 investigated by ultrasonic measurements2023
Author(s)
T. Yoshida, K. Jin, M. Ito, K. Wakiya, M. Nakamura, M. Yoshizawa, Y. Muro, A. Miyata, S. Zheristhin, J. Wosnitza, Y. Nakanishi
Organizer
学術変革(A)_Kich Off Meeting
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