2021 Fiscal Year Research-status Report
合金組織制御により創出されたキラル磁性体ナノ構造における磁気スキルミオン直接観察
Project/Area Number |
21K04626
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
肖 英紀 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (10719678)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スキルミオン / 合金 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、磁気スキルミオンと呼ばれるナノスケールの磁気渦構造が種々のキラル磁性体中に見いだされ、従来のハードディスクドライブに替わる次世代磁気メモリへの応用が検討されている。スキルミオンメモリを開発するためには、メモリ内のナノスケール空間においてスキルミオンがどのように振舞うのか検証する必要があるが、これまでスキルミオン研究は、均質かつ十分大きな単結晶を対象とすることが多かったため、ナノ構造中のスキルミオン形成に関しては実験的な情報は少なかった。そこで本研究では、合金組織制御を用いて自己組織的にキラル磁性体ナノ構造を形成し、ナノ構造中のスキルミオンの状態を走査透過電子顕微鏡直接観察により明らかにすることを目的としている。今年度は、メカニカルアロイング法によりB20型キラル磁性合金を合成し、電子顕微鏡観察用のための試料薄片化および微分位相コントラスト走査透過型電子顕微鏡による磁気構造観察を試みた。種々のアロイング条件を探索し、X線回折実験および電子顕微鏡観察により評価した結果、結晶サイズが40~100 nmの分布をもつB20型合金ナノ結晶の作製に成功した。同試料の薄片化条件が確立し、磁気構造観察が可能となった。また、次年度以降計画に向けて、β-Mn型キラル磁性体ナノ構造を含む合金探索を実施し、組成・熱処理条件を調整することで、幅数100 nmかつアスペクト比の大きいβ-Mn型ナノ構造の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りナノ結晶の合成法および試料薄片化法が確立し、走査透過型電子顕微鏡による磁気構造観察にも成功していることから、概ね順調に進展していると言える。一方、ナノ結晶粒で構成された多結晶体における磁気構造観察では、回折コントラストの影響により磁気構造の観察および解釈が容易ではなく、試料の最適化ならびにデータ取得条件や解析法を確立する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度確立した方法に基づいて、継続してB20型ナノ結晶中の磁気構造観察を実施する。合成条件を適宜修正し、結晶サイズ分布の異なる試料を作製する。スキルミオンサイズよりも十分大きい結晶サイズの試料を用いた実験も実施し、スキルミオン形成に関する結晶サイズ依存性を明らかにする。並行して、β-Mn型キラル磁性体ナノ構造を含む合金探索を継続する。メカニカルアロイングによるB20型ナノ結晶と合わせて、電子顕微鏡観察によりナノ構造中スキルミオン状態を明らかにする。
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