2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K04628
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 頌太 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40646907)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 原子層 / 表面 / ペロブスカイト / 金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一原理計算を用いて2次元物質や表面系における様々な安定構造を予測することである。特異な低次元構造および物性を予測して、3次元物質との差異を明らかにする。 ・今年度は、2019年に実験的に合成された2次元ペロブスカイトSrTiO3に注目し、その構造物性を詳細に研究した。TiO6からなる八面体の回転角が3次元系に比べて増大し、第一原理分子動力学計算を実行して構造相転移温度が1000 K以上となることを予測した。構造物性における低次元効果を明らかにしたという点に本研究の意義がある。 ・また、今年度は金属表面における構造相転移に関する研究も行った。近年、銀(Ag)ナノワイヤを曲げると、表面付近でfcc-bcc-hcp-fccの構造相転移が生じるとの実験報告がなされた。しかし、fcc金属のbcc構造は一般にはエネルギー的に不安定であり、実験結果の解釈に疑問が残る。そこで、表面効果を考慮した貴金属ナノワイヤの構造変形シミュレーションを実行し、bcc構造ではなくbody-centered-tetragonal (bct)構造が生じることを明らかにした。さらに第一原理分子動力学計算を実行することで、bct構造が熱力学的に安定であるためには、bct構造の周りをfcc構造が取り囲んでいる必要があることを指摘した。また、電子状態密度の結晶構造依存性について議論した。本研究を契機として、金属ナノワイヤの曲げ変形に関する詳細な実験が行われることを期待したい。 ・その他に、蛍石構造を持つ物質系に対して原子層構造の計算探索を行った。興味深い構造物性を示す原子層が見つかり、その詳細を理解するための解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以上の研究成果をまとめ、2本の論文を発表した。 ・2次元ペロブスカイトに関する研究論文ではSrTiO3のみに注目しているが、元素の組合せを変えた系(ABO3)についても同様の計算と解析を行うことで、構造・組成・物性の相関関係を議論する研究に発展することが期待される。 ・金属表面に関する研究論文では、fcc-bcc構造相転移に関するベイン変形のモデルを表面系に拡張したモデルを提案しており、さらにbct構造が安定化する必要条件を明らかにしており、他の金属系へ適用によってさらなる研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
非層状物質の原子層は、非ファンデルワールス型2次元物質として、近年盛んに研究が行われている。金属結合・イオン結合・共有結合などの多様な化学結合を有する原子層構造を予測した本研究成果は、当該分野の発展に大きく貢献するものである。一方で、実験的に合成済の非層状物質は約5万種類あり(物質データベースMaterials Projectを用いた調査結果)、これらの物質に対してどのような原子層構造が安定に存在するのかについては未解決である。高精度な計算手法に基づく網羅的な構造探索、およびその特異物性の解明が今後の課題である。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウイスルのため、現地参加を予定していた学会がオンライン開催となったため。 使用計画:研究会参加および研究打合せのための旅費として使用する。
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