2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of ionic correlation in superionic conductors using single crystals
Project/Area Number |
21K04636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢島 健 東京大学, 物性研究所, 助教 (10597800)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超イオン伝導体 / 単結晶 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
超イオン伝導体では、高濃度に含まれるキャリアイオンが古典的な単一イオンホッピングではなく、キャリアイオン同士の相関による協奏的な伝導を起こすことによって高いイオン伝導率が実現していると考えられている。我々はこれまでリチウム超イオン伝導体の単結晶を用いた研究から、このようなキャリアイオン同士の相関が必ずしもイオン伝導によい影響を与えるとは限らないことを発見し、適切な大きさのイオン相関を持たせることが重要であることを明らかにしてきた。しかしながら、イオン相関を適切に制御する方法は自明ではない。本研究では最適なイオン相関の制御方法を探るべく、温度や組成の変化が超イオン伝導体のイオン相関に与える影響を、大型単結晶試料の育成、精密結晶構造解析などを通じて明らかにすることを目的としている。これにより、超イオン伝導体のイオニクスに対する包括的な理解へと繋がることが期待される。 本研究では、上記目的を達成するためのモデル物質として現在最高のイオン伝導率を有するリチウム超イオン伝導体Li10GeP2S12(LGPS)を採用した。リチウム超イオン伝導体においてキャリアイオンであるリチウムは、アニオンからなる結晶骨格の中を伝導する。よって周囲の骨格組成の変化、つまりアニオン置換はイオン伝導に対して多大な影響を及ぼすと考えられ、イオン相関を制御する方法として有効であると予想される。そこでLGPSのアニオン置換体の単結晶育成を試みた結果、微小ではあるが単結晶を得ることに成功した。さらに育成条件などを検討することにより、大型の単結晶が得られるようになってきた。ただし結晶の大型化に伴い、結晶の質が低下していることがわかったため、さらに育成条件を検討し純良化した後、結晶構造解析など次のステップへと進む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニオン無置換のLGPSと比べ、アニオン置換したLGPSは構成元素が増えることにより、無置換の場合と比べて、育成条件の変化、結晶生成の有無、結晶のサイズ、結晶の品質など様々な影響が現れる。そのため、無置換のLGPSとはやや異なる最適化した育成条件を発見することが重要である。これまでの結果、育成条件の最適化によって大型の単結晶が生成する条件を見出すことはできた。ただし、大型化に伴い品質の低下が見られたことから、高品質化に向けて引き続き育成条件を検討することが必要である。その後、結晶構造解析等を行うことで、超イオン伝導体のイオン相関の制御方法に対する新たな知見を得ることが可能であることから、本研究は概ね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、大型純良単結晶を用いることが必須であることから、その育成に注力している。これまでに大型化は比較的成功しており、今後は結晶の純良化が求められる。一般に結晶品質は結晶育成の時間を延ばすなどによって改善することが多いことから、比較的早い段階で高品質な単結晶を得られると想定している。LGPSではリチウムイオンが多くの結晶学的サイトに分布しており、またアニオンサイトも複数種ある。そこでアニオン置換LGPS単結晶では、結晶構造解析によりリチウムイオンや置換したアニオンの分布を調べ、イオン伝導率測定の結果と組み合わせることで、アニオン置換がイオン相関に与えた影響を評価する。
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Causes of Carryover |
学会出張がオンライン化したことなどにより、わずかに残額が生じた。この経費は、旅費や消耗品購入などの費用として有効に活用する。
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