2022 Fiscal Year Research-status Report
二量体構造を利用した遷移金属酸化物の構造制御と機能探索
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21K04641
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
漆原 大典 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60824886)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 結晶構造解析 / 二量体構造 / 磁気物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では量子スピン系物質NaCu2VP2O10のもつスピンモデルを結晶構造評価および物性測定から明らかにする。NaCu2VP2O10は平面配位のCuO4が二量体構造を形成し、磁性イオンが二次元的な配位を示す物質である。結晶学的な知見に基づき二量体構造の配位環境および局所構造を制御し、電気磁気物性に関する機能探索を行う。当該年度の研究計画に基づき、磁性イオンサイトへの異種イオンの置換、Naイオン欠損の影響の調査および単結晶試料の育成を行った。 CuサイトにMgイオンを置換することで、不純物誘起の磁気秩序が発達することを明らかにしてきた。他のイオンを置換した試料においても磁気特性評価を行い、特定の置換イオンにおいて逐次相転移を示すことを明らかにした。平均構造および局所構造の評価を行い、結晶学的な知見からも評価を進める予定である。化学分析の結果から合成時の焼成温度に起因して顕著なNaイオンの揮発が生じていることが明らかとなった。Naイオンの欠損量に伴い積層方向の格子定数が減少し、磁化率の極大値を示す温度が変化した。Naイオンの欠損に伴い層間の磁性イオン間の相互作用が変化したことが示唆された。 フラックス法を用いたNaCu2VP2O10の単結晶の育成では、温度、冷却時間を検討し、最大で長手方向が1㎜程度の短冊状の結晶の育成に成功した。単結晶X線回折法および透過型電子顕微鏡法から目的の物質が合成できていることを確認した。合成条件を最適化することでより大きな単結晶を育成し、電気磁気特性の異方性の評価を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学組成に起因した結晶構造の変化を捉えることができ、単結晶試料の育成手法を確立することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
高品質な大型の単結晶試料を育成し、電気磁気物性評価を行う。
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