2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04647
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
安達 裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (30354418)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 酸化亜鉛薄膜 / 三酸化タングステン / エピタキシャル成長 / 不純物添加 / ガス選択性 / エタノール / 水素 / アセトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、粉末やナノ構造体の代わりに、エピタキシャル薄膜を酸化物半導体ガスセンサ母体材料として用い、添加不純物の酸性度・塩基性度とガス・センシング特性の関係を明らかにし、多様なガス種に対応できるガス選択性に優れた酸化物半導体ガスセンサを開発することを目的としている。そのため、本研究では、膜厚、面内粒径、基板とのエピタキシャル関係が同じである酸化物薄膜上に、様々な種類の酸化物あるいは金属粒子を蒸着してガスセンサを作製し、その蒸着粒子種とガス・センシング特性の関係を調査することが主な実験となる。 2022年度は、パルス・レーザー・デポジション法でエピタキシャル成長させた酸化亜鉛および三酸化タングステン薄膜上に、MgO、Ta2O5、MoO3やSc2O3などの不純物粒子を蒸着したサンプルを作製し、それらのガス・センシング特性の評価を行った。蒸着した不純物の種類によりエタノールとアセトンに対する応答性が異なり、添加不純物の塩基性度が高くなると、エタノールに対するガス選択性が向上する傾向が見られた。また、Si、あるいはSiOxの添加は、低温でのアセトンに対するガス選択性を向上させる効果があることもわかった。従来は、このアセトンガス選択性の向上は、酸化タングステンの構造変化によるものとされていたが、本研究では酸化タングステン薄膜の構造変化は観察されず、薄膜表面に存在するSi系不純物粒子に起因するものと推察された。これら研究成果は2件の学会発表として、社会に公表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、前年度に確立させたエピタキシャル薄膜作製条件を用いて、様々な種類の酸化物あるいは金属粒子を薄膜表面に蒸着したガスセンサを作製し、そのガス・センシング特性測定を行った。それら測定結果を解析した結果、添加不純物の塩基性度が高くなると、エタノールに対するガス選択性が向上する傾向があることがわかった。また、Si、あるいはSiOxの蒸着は、アセトンに対するガス選択性を向上させる効果があることも明らかになった。本研究では、添加不純物の酸性度・塩基性度がセンサ応答と相関があること明らかにすることが目的のひとつであるので、この目的は本年度の研究により達成された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度までに得られた結果に基づき、水素、アセトン、エタノールに対してガス選択性を持つ、高感度薄膜ガスセンサの作製を試みる。具体的には、ガス選択性の向上は検知対象ガスに適切な不純物粒子を薄膜ガスセンサ上に蒸着することによって実現し、センサの高感度化は薄膜ガスセンサの膜厚制御によって行う。これらの研究により、クリーンなエネルギー源として期待されている水素に対して優れたガス選択性を持つセンサ材料、糖尿病などの呼気バイオマーカーとして知られているアセトンに対して優れたガス選択性を有するセンサ材料、そしてアルコール検知用に用いられているエタノールに対して優れたガス選択性を持つセンサ材料の開発指針が得られることが期待できる。
|
Causes of Carryover |
エピタキシャル薄膜ガスセンサを作製するためには単結晶基板が必要となるが、近年の物流の混乱、為替レートの変動のため必要枚数を年度内に納品することができなかった。そのため、入手できなかった分の金額を次年度に繰り越し、新年度になってから購入することにした。
|
Research Products
(2 results)