2021 Fiscal Year Research-status Report
ユビキタス元素を用いた低光弾性透明酸化物ガラスの創製
Project/Area Number |
21K04652
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
斎藤 全 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80431328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 汎用元素 / 無色透明酸化物ガラス / 光弾性 / 屈折率 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶プロジェクター用のレンズ,フィルターのように,厳密な偏光制御をともなう光学ガラス素子では,極めて小さな応力誘起複屈折性(ゼロ光弾性)が必須な機能である。ユビキタス元素を用いた無色透明な酸化物ガラスの提案,複雑な組成によらない低光弾性・高屈折率性の発現と検証,ガラスの微細構造に立ちかえった機能性の解明を行った。ガラス溶融中の電気炉内の酸素分圧のその場測定を行い、大気酸素濃度(0.2 atm)と比べて低い酸素分圧中(0.06 atm)でガラスを再現性良く作製できることが分かった。低酸素分圧で作製されたユビキタス酸化物ガラスは、汎用元素(Ca, Zn, Sn, P, O)のみで、高屈折率性・低光弾性を有しており、これまでに有害な鉛を高濃度に含んだ状態でプロジェクター用のレンズ、フィルター素子として用いられてきた光学素子を一変できる性能を示している。 2021年度に実施した研究内容には、酸素分圧を下げなければ酸化する、Sn2+を含んだガラスの作製について、非常に画期的かつオリジナルな作製プロセスが含まれている。ありふれた元素で、実際の工場において鉛を用いず、雰囲気制御も必要なく、一度に大量にガラスが作製できる。工場レベルへスケールアップされたガラスの生産プロセスの最適化の例を提示でき、産業界へ成果を還元できる可能性がある。そうすることで、元素選択と構造特異性に関する科学的根拠を提示し,ゼロ光弾性,無色透明,有害元素フリーで持続可能な光学素子の開発につなげることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
酸化物ガラスの開発と、その作製プロセスにおいて、ブレークスルーを成し遂げていると考えている。鉛を一切含まなくても、高濃度鉛含有酸化物ガラスと同等以上の低光弾性、高屈折率性、光学透明性を新たに見出したユビキタス酸化物ガラスで実現できる。さらに、ガラス溶解中に酸化・還元が容易に起こるSn2+を含む酸化物ガラスの大量合成法を新たに試行錯誤の結果、実験的に見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究室レベルのガラス溶解法を産業レベルで実際に適用できるような段階に引き上げることが当面の目標である。その過程で、ガラス組成の改変を実施して、地殻存在元素の上位20までで構成される、低光弾性、高屈折率性、無色透明性を有した真のユビキタス酸化物ガラスへと昇華させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、海外学会への渡航ができず、旅費を使用できなかったから。
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