2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on growth control and mechanical properties of fullerene nanowhiskers
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21K04654
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
橘 勝 横浜市立大学, 理学部, 教授 (80236546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 凌 横浜市立大学, 理学部, 助教 (70846708)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フラーレン / 結晶成長 / 力学的性質 / 分子結晶 / 弾性 / 硬さ / ウィスカー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、液-液界面析出(LLIP)法によって育成された溶媒を含んだC60ナノウィスカー(C60NWs)が、一般的な分子性結晶を凌ぐ3 %以上もの大きな弾性ひずみを示すことを発見した。これは結晶内での球状のC60分子と溶媒分子の分子配列や分子間相互作用によると考えられている。一方で、楕円形状のC70分子からなるC70NWsが、C60との比較においてどのような力学的性質を示すかは、分子形状の効果を明らかにする上で大変興味深い。そこで本年度は、C60NWsと同じ手法(LLIP法)を用いてC70NWsを育成し、その力学的性質について調べた。 結果として、溶媒和した状態ではC70NWsもC60と同様に大きな弾性変形を示すことがわかった。一方で、大変興味深いことに脱溶媒和したC60NWsと同じ構造をもつC70NWsにおいては大きな弾性変形が維持されることが明らかとなった。この振る舞いは、C60NWsのように脱溶媒和によって大きな弾性変形が起こらなくなる、つまり脆くなる性質とは大きく異なる。このようにC70NWsの弾性的な性質には溶媒和の効果が小さく、分子形状が関係していることが考えられる。 さらに、ナノインデンテーションによる硬さや複合弾性率の測定からも、脱溶媒和前後の振舞は、曲げ変形の実験結果と強い相関がみられた。さらに注目されることは、C70NWsの硬さや複合弾性率の絶対値が脱溶媒和したC60NWsと同程度あるいは低いことがわかった。これらの結果は、C70NWsの力学的性質には、溶媒効果が小さく、分子形状や弱い分子間相互作用が関係していることを示唆している。 今回得られた力学物性に及ぼす構成分子の分子形状の効果は分子結晶の弾性や塑性といった力学物性のメカニズムの一般論を理解するための新たな知見になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々なフラーレンナノウイスカーの成長制御と力学的性質を目的としており、本年度は高次フラーレンC70に注目して、力学特性を調べた。特に、新たにナノインデンテーションを駆使することによって、より定量的な評価を行うことができた。一方で、成長制御の観点からは、十分なデータを得ることができなかったため、まとめるまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
成長制御の観点から、溶媒の種類を変えることによって、よりユニークな力学特性の制御や発見に繋げたいと考えている。また、ナノウイスカーだけでなく、成長制御によるナノシートやキューブなどの育成および力学特性の評価にも発展させ、より一般的な力学特性の理解に繋げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
装置(備品)購入とその付属品の購入を予定していたが、実験の進捗に合わせて別の付属品が必要になったため次年度に使用するとにした。また、当初予定していた国際会議と共同利用研究での出張がコロナ禍でキャンセルとなったため次年度以降に使用することとした。
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Research Products
(14 results)