2023 Fiscal Year Annual Research Report
Red and near-infrared emission upconversion phosphors utilizing oxide host crystal phonons
Project/Area Number |
21K04656
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 教授 (00419235)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アップコンバージョン蛍光体 / 希土類 / 酸化物 / 錯体ゲル法 / 多フォノン緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
アップコンバージョン発光とは、エネルギーの低い長波長の光を多光子・多段階励起により、エネルギーの高い短波長の光に変換する現象である。太陽電池や3Dボリュームディスプレイなど、様々な分野での応用が期待されている。一般的に酸化物は化学的、物理的に安定であり、高温環境での用途に有益であるため、近年特に高温環境下での応用が注目されている。 2023年度は、これまで様々な複合酸化物を合成してきたうち、強い赤色発光が得られたEr,YbドープしたGd2O3、LaGdO3、BaGd2ZnO5の3つの母体を中心に、GdをYに置き換えることでフォノンの影響が赤色と緑色発光にどのような影響を与えるかを調査した。またErとYb濃度が赤色と緑色発光に与える影響も調べた。さらに、980nmを励起光に用いたアップコンバージョン発光に加え、980nmの光子2つ分に相当する490nmを励起光に用いての調査も行った。 ドーパントの影響とフォノンの影響は、3種類の母体それぞれで比較的類似した結果が得られた。980nm励起では赤色が優勢であったのに対し、490nm励起では緑色発光が優勢であることが分かった。これより、赤色発光が優勢になるアップコンバージョン発光は、2段階励起後の緩和ではなく、2回の励起の間に緩和が含まれるプロセスが優勢であることが示された。またErとYb濃度を増やすことで、どちらも発光の赤/緑比が増大した。これは、Er中の緑色発光を可能とする準位まで励起された電子が、その一部を他のErやYbにエネルギー移動することで2光子励起の状態の電子数が減少し緑色発光が抑制されたためと考えられる。GdをYに置換しフォノンを大きくした試料では、赤/緑比は増大したものの発光強度そのものが減少した。フォノン緩和は原理上は赤色発光の増大に貢献できるが、それ以上に消光に強く寄与し、赤色発光の増強にはつながらなかった。
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