2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanistic Understanding and Process Development of Electrodeposition of Doped-Si Thin Film
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21K04668
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
國本 雅宏 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60619237)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Si電析プロセス / 理論化学計算 / 表面増強ラマン / 異種元素ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、太陽光発電デバイス用Si薄膜の形成とその薄膜中へのドーパント共析、及びp-n接合体形成を実現する非水溶媒利用電解析出プロセスの開発を目的としている。固相薄膜の大面積一括形成やマイクロ構造体形成を容易とする電解析出プロセスでSi薄膜形成が可能となれば、再生可能エネルギーの利活用に不可欠となるSi太陽電池の更なるコスト削減と広範囲の普及に貢献できる。本研究者は従来の研究事業を通じ、イオン液体をはじめとする非水溶媒系を用いた電解反応によりSi薄膜が形成可能であること、及びその表面平滑性や純度が電析条件最適化により制御可能であることなどを実証してきた。また量子化学計算をはじめとする計算解析や、表面増強ラマン散乱分光(SERS)に代表される表面感度の高い分光測定手法を駆使し、その電解反応プロセスを分子・原子レベルの視点から明らかにしてきた。そうした知見を基に21年度は、薄膜の更なる高純度化を可能にするプロセスの開発と、形成した薄膜の半導体特性制御を可能にするドーピングプロセスの開発に着手した。高純度化プロセスの開発では、後処理としてフッ酸を用いた薄膜の洗浄を施すことが有用であるとの示唆を得、既往研究を上回る純度のSi組成を得ることに成功した。ドーピングプロセスの開発では、Al、及びPドーパントの共析を可能にする前駆体を選定し、またそれぞれの共析プロセスを段階的に施すことによってp-n接合界面の形成に成功した。このp-n接合構造に関しても今後更なる組成制御を進める。理論計算では、Si前駆体を中心に量子化学計算モデルを構築し、SERS計測手法の検討においても、電極表面シグナルの増幅に用いるプラズモンセンサの増強能の向上を達成した。今後これらの手法によりドーピング共析機構の基礎的メカニズムを明らかにし、薄膜のさらなる純度向上、及び組成制御につなげる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
21年度は、電解析出によって形成されたSi薄膜の更なる高純度化、ドーパント共析、及びそれらメカニズムの基礎解析など一連の検討に着手し、電析後に行う後処理工程の最適化、p-n接合界面試作、及び理論計算モデル構築とSERS用センサ最適化に至った。 まずSi薄膜高純度化を企図した後処理工程最適化では、OやCなど不純物元素とSiとの間の結合をフッ酸により切断する機構を想定しそれら元素成分の除去を試みた。検討の結果、最適フッ酸濃度、及び最適処理時間の設定に成功し、従来研究との比較で最高純度である局所純度90%のSi薄膜の形成を達成した。このフッ酸処理にあたっては、電析過程において一定の表面ラフネスを与えることが必要であり、したがって高過電圧条件の下での電析が重要になることも示唆された。フッ酸処理の他にも、種々の有機溶媒での洗浄が高純度化に向けた処理として有用であるとの示唆も得、今後はこの点も踏まえ最適化に取り組む。 ドーパント共析の検討では、ドーパント元素であるAl、Pの前駆体として塩化物を選定しそれらの濃度条件を調整することで析出Si薄膜内に不純物元素を混入させるプロセスを開発し、さらにそれらプロセスを複合させることによってp-n接合界面の形成を達成した。このp-n接合は、降伏現象を伴う特有のI-V曲線の検出によって確認した。基礎解析から明らかにされる共析反応機構の知見にも依拠しながら、今後更なる高精度組成制御を進める考えである。 またそのような反応機構の特定、解明に際しての強力なツールと位置付ける、理論計算解析と表面分光計測に関しては、それぞれの手法を改良することによってその予備検討を終えた。具体的に理論計算解析においては反応モデルを確立し、SERS計測においては、電極表面シグナル増強に対し主要な役割を果たすプラズモンセンサの増強能を高める改良を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
21年度は、ドーパント共析Si薄膜形成のための基礎プロセスとして、Si電析とその後処理工程の開発、p-n接合界面形成のための初期プロセスの開発、及び基礎解析のための手法確立を達成し、本研究の目指すドーピングプロセスの分子レベル解析とその確立に向け研究環境と体制を整備することができた。これを踏まえて22年度は、Si薄膜の更なる高純度化も視野に入れた、p-n接合界面の組成精密制御とドーパント共析反応機構の基礎的解析を具体的に進めていく。 Si薄膜組成制御においては、後処理と共に電析過程そのものの最適化も視野に入れ、前駆体濃度を高く保持しながら電荷移動過程を促進できる、従来以上の高温高圧環境を実現する電解セルを新たに開発して応用する考えである。高い界面前駆体濃度を保持しての析出が可能となるため組成制御への高い効果が期待される。また後処理工程として取り組んできたフッ酸処理と並行して熱処理も検討し、電析過程、後処理工程の両面から総合的にSi純度を向上させる施策を講じる。 理論解析では、AlやPの反応前駆体である塩化物が進めるSi電極表面上の電荷移動過程と分解過程を、21年度に検討した分子モデルに基づきながら、エネルギーダイヤグラム算出と詳細な電子状態の分析を通じて解析する。より具体的には、Siの反応前駆体であるSiCl4は電極との電子授受後、多量体を形成して多段階的にSi結合を形成していくことが示唆されているが、AlやPなど異種元素が関わる反応の場合も、そうした多量体形成がSi-P結合やSi-Al結合形成に寄与するか否かを、反応経路解析によって検証する必要がある。また同時に素過程と律速過程を解明することによって制御すべき過程を特定し、その知見を電解プロセスの条件設定に利用したい。さらにそうして得られた中間体の界面での存在状態を確認するSERS分光計測にも取り組む。
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Research Products
(1 results)