2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of gold nanoparticles-based photosensitizer nanomachine capable of ON-OFF switching for reactive oxygen generation
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21K04674
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
新森 英之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40311740)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 金コロイド / ポルフィリン / 活性酸素 / 一重項酸素 / 光増感機能 / ロタキサン / 酸塩基反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、外部環境応答性の活性酸素種発生能を有する光増感物質修飾金ナノ粒子を分子マシン機能の活用によって開発することが目的である。前年度の研究成果より、活性酸素種の1種である一重項酸素の発生能が光増感部位と金ナノ粒子の距離に依存することが明らかとなった。この事実を踏まえた令和5年度の研究実績の概要は以下の通りである。 <ロタキサン構造を有するポルフィリン修飾金ナノ粒子の合成> 前年度に合成が完了した擬ロタキサンは大環状化合物に光増感性ポルフィリン、軸成分分子の末端に嵩高いストッパーとなる3,5-ジt-ブチルベンジルアミノ基と金ナノ粒子界面でAu-S結合が形成可能なチオール基を有する。そこで、別途トリフェニルホスフィン保護金ナノ粒子を調製し、塩化メチレン中で前述した擬ロタキサンと混合し、精製後にロタキサン結合によって連結されたポルフィリン修飾金ナノ粒子を合成した。ここでは軸成分分子のストッパー側に導入したアンモニウムカチオンと大環状化合物であるポルフィリン修飾ベンゾ24-クラウン-8との静電的相互作用によってインターロック構造が形成されており、そのポルフィリン導入率は1粒子当たり約5個と見積もられた。 <ロタキサン結合型ポルフィリン修飾金ナノ粒子の一重項酸素発生能評価> 上記で得られたカチオン性ロタキサン構造を有するポルフィリン修飾金ナノ粒子の一重項酸素の発生効率を化学クエンチャーにより解析したところ、10%程度であった。ここに様々な塩基を使用してストッパー側のアンモニウムイオンより脱プロトン化を試み、一重項酸素発生効率の変化を測定したが顕著な変化は見られなかった。これはロタキサン結合による連結でさえも、金ナノ粒子の影響で一重項酸素発生効率が抑えられている上にプロトン形と脱プロトン形の酸-塩基平衡混合物で化学種が存在しているためであると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度に実施した研究成果では、まず前年度に合成が完了したチオール末端基を有するポルフィリン修飾擬ロタキサンへ別途調製したトリフェニルホスフィン保護金ナノ粒子を作用させることでロタキサン結合によって連結されたポルフィリン修飾金ナノ粒子を計画通りに合成できた。また、ここで得られたロタキサン結合型ポルフィリン修飾金ナノ粒子の光照射下での一重項酸素発生効率を求めることもできた。その後、このロタキサン部位の軸成分分子には正電荷を持ったアンモニウムイオンが存在していたために、酸-塩基反応による脱プロトン化によって光増感性大環状化合物の金ナノ粒子側へのシャトル運動を誘起した状態で一重項酸素発生効率を確認した。しかしながら、明らかな一重項酸素発生効率の変化は観測されなかった。この主な原因は酸-塩基平衡に由来するシャトル移動前後の化学種の混在であると示唆された。これらの事実より、活性酸素発生能の顕著な制御に関しては改善の余地があるものの、現在までに本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究結果より、光増感性ポルフィリンと金ナノ粒子界面との距離が光照射時の一重項酸素発生に関して顕著な影響を及ぼすことが明らかとなった。しかしながら、令和5年度に合成及び光増感能の評価を実施したアンモニウムカチオン性のロタキサン構造を有するポルフィリン修飾金ナノ粒子に関しての解析結果は酸-塩基反応による中性2級アミンへの変換に伴った明らかな一重項酸素発生能の抑制現象は観測に至らなかった。この事実が、ポルフィリンと金ナノ粒子界面との距離が相対的に遠距離なプロトン化種と比較的近距離と期待される脱プロトン化種との混在によることが主な原因であると予測した。そこで今後は、まずカチオン性ロタキサン結合によってポルフィリン修飾された金ナノ粒子と塩基との反応を行い、脱プロトン化された非イオン性ロタキサン結合型ポルフィリン修飾金ナノ粒子の単離を試みる。その後、金ナノ粒子界面よりポルフィリン部位が相対的に離れたプロトン形とより近接した脱プロトン形の一重項酸素発生効率をそれぞれ求め、比較検討することで活性酸素発生能のON-OFFスイッチングが可能か否かを検討し、本研究課題の目的の金ナノ粒子系ナノマシンを創出する。
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Causes of Carryover |
理由:これまでに研究代表者らが行ってきた金ナノ粒子の合成や界面機能化に関する知見を参考にして本研究課題のコア粒子に適した直径2ナノメートル程度の金ナノ粒子が調製でき、且つこの金ナノ粒子の界面でのポルフィリン修飾ロタキサン部位の導入が比較的容易であったため若干のコスト削減に繋がった。また、今回の分子マシン型ポルフィリン修飾金ナノ粒子にも今まで利用した一重項酸素発生効率の測定手法が適用できたことで条件検討用の薬品に要する費用が抑えられた。さらに、研究調査の打ち合わせでは、一部を電子メールによって効率化を図った。
使用計画:カチオン性ロタキサン結合によってポルフィリン修飾された金ナノ粒子の1ポットでの塩基との反応では光照射下での一重項酸素発生効率の顕著な変化が予想を反して観測できなかった。そのため本研究課題の目的達成において、これに対応する脱プロトン化された化学種の単離が必要となったことから新たな分離方法を検討する必要があり、これまでに購入していない新たな薬品や器具の追加購入に充てる。
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[Journal Article] Inhibition of cancer cell-platelet adhesion as a promising therapeutic target for preventing peritoneal dissemination of gastric cancer2023
Author(s)
T. Nakayama, R. Saito, S. Furuya, K. Shoda, S. Maruyma, K. Takiguchi, K. Shiraishi, H. Akaike, Y. Kawaguchi, H. Amemiya, H. Kawaida, N. Tsukiji, T. Shirai, H. Shinmori, M. Yamamoto, S. Nomura, T. Tsukamoto, K. Suzuki-Inoue, D. Ichikawa
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Journal Title
ONCOLOGY LETTERS
Volume: 26
Pages: 538
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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