2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Nanocomposite Lacquer Materials Using Functional Nanomaterials as Ultraviolet Stabilizers
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21K04681
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 徹雄 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70369924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 正樹 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (40746111)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 漆 / 紫外線劣化抑制剤 / ナノ粒子 / バイオナノファイバー / ナノコンポジット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、漆塗料の機能開発において最重要課題のひとつである漆塗料への「紫外線劣化抑制機能の付与」を目的として実施している。本研究では、新規の有機・無機ダブルシェル型TiO2ナノ粒子を紫外線吸収剤とすることで、漆塗膜本来の質感を維持しながら漆塗膜へ紫外線劣化抑制機能を付与するとともに、ダブルシェル型TiO2ナノ粒子を構造色塗装材料としても活用することに特徴がある。さらに、紫外線吸収TiO2ナノ粒子および漆塗膜の紫外線白化の原因物質である漆液水溶性物質の漆塗料への均一分散の実現にあたり、バイオナノファイバーを分散材として利用し、同時に乾漆作製のための補強材としても活用することを想定している。 この際、本研究の全工程を「紫外線吸収ナノ粒子の漆塗膜への均一分散法の確立」、「紫外線吸収ナノ粒子による構造色発現を利用した塗装法の開発」、「バイオナノファイバーを骨材とするナノコンポジット乾漆の創製」の3つの区分に分割し、各区分の目標の実現を通して本研究の目的を達成する。 令和3年度は、「紫外線吸収ナノ粒子の漆塗膜への均一分散法の確立」分野では、漆塗膜と高い親和性を有するダブルシェル型TiO2ナノ粒子の合成とその紫外線吸収特性を確認し、「紫外線吸収ナノ粒子による構造色発現を利用した塗装法の開発」分野では、金属ナノ粒子を用いて構造色発現の条件の探索を実施した。そして、「バイオナノファイバーを骨材とするナノコンポジット乾漆の創製」分野では、各種バイオナノファイバーの凍結乾燥により、補強材として適したクライオゲルの作製方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「紫外線吸収ナノ粒子の漆塗膜への均一分散法の確立」分野については、TiO2ナノ粒子(石原産業株式会社、ST21)にSiO2コーティング、ついで、シランカップリング反応により、アルキル層(ドデシル、C12)およびSiO2層の有機無機二重層で覆われたC12-TiO2ナノ粒子を調製した。得られたC12-TiO2ナノ粒子は有機溶媒に対して高い分散安定性を示し、無被覆のTiO2ナノ粒子と比較して、紫外線吸収特性を維持しつつ253.7 nmの紫外線照射下でのメチレンブルー分解速度が低減した。さらに、調製したC12-TiO2ナノ粒子を漆塗膜へ均一に分散させることを目的として、ナノ粒子最外層のアルキル末端にウルシオールと結合する官能基の導入について検討した。官能基の選定においては、ウルシオールのモデル化合物としてカテコールを用いて、各種官能基を有する求核剤による芳香環への置換反応を調査した。チオール基がカテコールの3-位に効果的に結合することが明らかとなった。そこで、C12-TiO2ナノ粒子のアルキル末端にシランカップリング反応でチオール基を導入し、漆塗膜と高い親和性が期待できるSH-TiO2ナノ粒子を得た。 また、「紫外線吸収ナノ粒子による構造色発現を利用した塗装法の開発」分野では、紫外線吸収ナノ粒子による構造色発現を目指して、金属ナノ粒子に疎水性ポリマーを添加し、光学特性を評価した。その結果、ポリマーの添加量が少ないときは金属光沢を示したが、ポリマーの添加量が70 wt.%から80 wt.%で構造色が見られた。 さらに、「バイオナノファイバーを骨材とするナノコンポジット乾漆の創製」分野においては、ナノコンポジット乾漆の骨材として、機械解繊セルロースナノファイバー(CNF)、TEMPO酸化CNF、キチン、キトサンの凍結乾燥によるクライオゲルの作製方法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
「紫外線吸収ナノ粒子の漆塗膜への均一分散法の確立」分野では、今年度あらたに調製したSH-TiO2ナノ粒子を、実際にセルロースナノファイバーやキトサンナノファイバーなどのバイオナノファイバーあるいは漆液中に混合し、その分散安定性を評価する。 また、「紫外線吸収ナノ粒子による構造色発現を利用した塗装法の開発」分野では、今年度おこなった予備的な実験からポリマーや樹脂中で金属ナノ粒子の重量比が20~30 wt.%で構造色が発現したことから、紫外線吸収ナノ粒子が漆中で構造色を発現するためにはある程度高い濃度で安定に分散させる必要があると考えられる。一方で、漆中にナノ粒子を高濃度で分散させることは、漆中でのナノ粒子の凝集を促進し、漆の風合いを損なうことに繋がる。そこで、pHやナノ粒子濃度がバイオナノファイバー中での分散性に与える影響を精査し、漆塗膜に高い紫外線吸収特性を付与しつつ、構造色を発現するような条件を検討する。 さらに、「バイオナノファイバーを骨材とするナノコンポジット乾漆の創製」分野では、骨材強度の増強と紫外線吸収ナノ粒子の分散安定性の向上を図るために、酸点を有する化学解繊CNFと2点以上の塩基点を有するリンカー分子との反応によりバイオナノファイバー間架橋三次元網目構造の構築を目指す。さらに、三次元網目構造バイオナノファイバーのクライオゲルを骨材とするナノコンポジット乾漆を作製し、漆塗膜強度試験ならびに紫外線劣化試験を実施することで、バイオナノファイバー骨材の有用性を検証する。
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Research Products
(1 results)