2021 Fiscal Year Research-status Report
溶質原子の粒界偏析予測に基づく材料組織設計指針の提示
Project/Area Number |
21K04687
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
塚田 祐貴 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00620733)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 溶質原子 / 粒界偏析 / 粒界相 / 多成分系合金 / ニッケル基合金 / オーステナイト系ステンレス鋼 / ハイエントロピー合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
多結晶組織の粒界を一つの相とみなしてギブスエネルギーを設定する粒界相モデルに基づき、多成分系合金における溶質原子の粒界偏析予測プログラムを開発した。粒界相の組成は、粒界相の体積一定の条件の下で母相と粒界相の二相組織のギブスエネルギーが最小となる条件を探索することで求めた。ランダム粒界の偏析を解析対象とし、粒界相のギブスエネルギーとして、液相のギブスエネルギーを代用した。母相および液相のギブスエネルギーは、計算状態図の熱力学データベースを用いて温度・組成の関数として計算した。
開発したプログラムを用いて、ニッケル基合金(Inconel718、Inconel617B)、オーステナイト系ステンレス鋼(type 316L steel)、ハイエントロピー合金(Cantor alloy)における粒界相の組成を計算した。なお、本計算では粒界相の体積率はゼロに設定した。Inconel718におけるMo、B、Inconel617BにおけるCr、Mo、B、Cの偏析傾向について、計算結果と先行研究における実験データが一致することを確認した。これらの溶質原子の粒界偏析は、粒界におけるホウ化物や炭化物の形成を引き起こす要因の一つになっていると推察される。さらに、type 316L steelにおけるMo、P、B、C、Cantor alloyにおけるNi、Mnの粒界偏析傾向について、計算結果と先行研究における実験データが一致することを確認した。以上の結果は、粒界相モデルと計算状態図の熱力学データベースを用いた粒界偏析計算の有用性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粒界相モデルと計算状態図の熱力学データベースを用いた多成分系合金の粒界偏析計算の有用性を示すことが本研究の重要な目的の一つである。当初の計画では、ニッケル基合金のみを解析対象としていたが、オーステナイト系ステンレス鋼、ハイエントロピー合金を解析対象に追加した。これにより、本研究で開発したプログラムが種々の合金系の粒界偏析予測に有用であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のニッケル基合金について、今年度開発したプログラムを用いて粒界偏析計算を実施するとともに、公開されているデータベース、専門書、学術雑誌論文などからクリープ強度データを収集する。得られたデータセットを使用して、材料組織(強化相の体積率、粒界相の組成など)とクリープ強度の相関解析を実施し、さらに、クリープ強度予測モデルの構築を試みる。収集可能なクリープ強度データ数に限りがあることから、クリープ強度予測モデルについては、材料組織を説明変数、クリープ強度を目的変数とする線形モデルとする。
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Causes of Carryover |
研究発表のための旅費を計上していたが、今年度は参加した学会が全てオンライン開催となった。また、研究アシスタントの人件費を計上していたが、今年度は適任者が見つからなかった。次年度、粒界偏析計算に用いる熱力学データベースの更新費用に充てる予定である。
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