2022 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of visible-light-transparent flexible IoT sensors using oxide semiconductors
Project/Area Number |
21K04696
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
杉山 睦 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 教授 (40385521)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | NiO / 可視光透過型半導体 / 酸化物半導体 / フレキシブルデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ワイドバンドギャップ酸化物半導体の特長を活かした、透明太陽電池から電力供給する透明IoTデバイスを試作し、「超安価な完全独立透明フレキシブルIoTセンサ」を実現するための要素技術研究と、フレキシブルデバイス固有の欠陥や長期間使用時の劣化など、半導体中の欠陥生成・抑制メカニズムの解明を並行して実施することを目的としている。本研究は、工学的に透明・フレキシブル・外部電源不要なデバイスを提案するとともに、理学的にフレキシブル酸化物半導体の欠陥物性を明らかにすることで、欠陥抑制・デバイス長寿命化に貢献するものであるが、2022年度は主として、透明なIoTデバイス用半導体素子のポリイミド基板上への作製とモノリシック化、およびNiOの半導体物性解明に関する研究を行った。これらの課題に対して、RFスパッタ・静電噴霧・およびスプレー熱分解法と、3種類の成膜方法で高品質な酸化物半導体薄膜を成膜でき、透明太陽電池や二酸化炭素センサーなどのデバイスを試作することができた。また、研究成果は4編の査読付き英文論文発表および11件の国内学会発表と、多くの機会で外部発信することができた。 IoT社会実現のため、電源と各種センサ・ICがモノリシック化したデバイスの研究が盛んであるが、「電源まで含めてすべて透明・薄膜」というデバイスの提案は国内外ともに皆無である。今回提案するIoTデバイスの環境では、紫外線・高温・高湿度など厳しい環境であり、モノリシック化させ安定的に使用するためには、ワイドギャップ酸化物半導体で作製することが独創的かつ重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで高軟化温度のガラス上にスパッタ成膜し作製してきた各種透明デバイスであるが、軟化温度が低いプラスチック系基板では、成膜温度や基板と半導体との付着性、湾曲時に生じる欠陥の抑制技術などの課題が生じる。これらを解決するために、2022年度は以下の3つの研究を行った。 (1) 非加熱スパッタ法を用いて、NiO太陽電池-CO2ガスセンサ一体型での、自ら発電した電力で自らモニタリングを行う「セルフパワーデバイス」を試作した。また、酸化物半導体薄膜の膜質の比較を、ガラス基板上に堆積した多結晶薄膜や、MgO上に堆積したエピタキシャル薄膜との間で行った。 (2) スパッタ法と平行して、非真空・低温で成膜可能な「静電噴霧装置」の立ち上げと、導電性NiOの成膜を行った。得られた膜に対しスパッタ成膜した薄膜との結晶品質を比較した。 (3) NiO成膜時やデバイス作製時に生じる欠陥種の判別・定量化(SEM,TEMなどの構造特性、CL,PL,透過,ラマンなどの光学特性評価)、および材料固有およびプラスチック基板上の欠陥低減技術検討(Hall,CVなどの電気評価)を行った。とりわけ、NiOの輻射再結合系欠陥をPL・CL測定で、非輻射再結合系の深い欠陥をPDS(光熱偏向分光法)にて評価検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、自ら発電した電力で動作する各種センサ等を融合した、超安価な透明フレキシブルIoTセンサの基幹技術を、材料からデバイスまで一貫して提案するプロセス開発と、フレキシブルデバイス固有の欠陥や長期間使用時の劣化など、半導体中の欠陥生成・抑制メカニズムの解明する事が目的である。2023年度は、22年度までの研究を引き続き行うのと並行して、IoTデバイスのフィールドテストを、実際のビニールハウスや衣類等を用い、風雪や降雨等の厳しい環境下における、フレキシブルIoTデバイスの劣化メカニズムや欠陥の経時変化の解明、および実際の使用環境に合わせた各種デバイスの感度等の検討、を行う。 2023年度の目標は、①実際の使用環境下において、動作特性が10%/年程度しか劣化しないIoTデバイスの提案と、②実際の使用環境下において、透明太陽電池で発電した電力で各種透明センサを動作させることができるようにする。大きな問題が発生しないよう、耐久性に関する試験をあらかじめ屋内の研究室で実施しておき、生じる欠陥・取り組むべき課題について事前に明確にしておく。
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