2021 Fiscal Year Research-status Report
高周波対応耐熱性絶縁高分子材料の開発と低誘電正接の制御因子解明
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21K04697
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
石井 淳一 東邦大学, 理学部, 准教授 (30585930)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ポリヒドロキシアミド(PHA) / ポリベンゾオキサゾール(PBO) / 低熱膨張化(低CTE化) / 溶媒溶解性 / 溶液加工性 / 位置異性体 / ビス(o-アミノフェノール)モノマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では第5世代移動通信システムに用いられる電子デバイス用絶縁材料の開発を目指し、低い比誘電率(低Dk 2.5 以下)と低い誘電正接(低Df 0.001以下@10 GHz)を合わせ持ち、ハンダ実装に耐えるガラス転移温度280 ℃以上、優れた熱寸法安定性(線熱膨張係数CTE;20 ppm/K以下)、低吸湿性(0.5%以下)、優れた膜靭性(破断伸度50%以上)、難燃性(UL94,V-0)、そして優れた加工性を全て満足する高周波対応耐熱性絶縁高分子材料の開発、そして高分子の一次および高次構造が誘電特性に与える影響について調査し、低Df化の分子設計指針を明らかにすることを目的としている。初年度の研究実績は、優れた誘電特性が期待できるポリベンゾオキサゾール(PBO)フィルムの「低CTE化」とPBO前駆体であるポリヒドロキシアミド(PHA)の「溶媒溶解性=溶液加工性」を両立させる方法を見出した点である。従来技術では「PHAの溶媒溶解性」と、そのPHAから得られる「PBOフィルムの低CTE化」の両立は困難であったが、PHA主鎖を屈曲させ溶媒溶解性を高め、そのPHAフィルムの熱環化過程を通じで生成したPBO主鎖が直線構造へと変化することで低CTE化を実現できる。その効果の発現には、官能基の位置異性体効果を利用した新規ビス(o-アミノフェノール)モノマーの適用が重要になる。そのモノマーを用いて重合したPHAはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に室温で14.0 wt%まで溶解できる。そして、その溶液から製膜し熱環化したPBOフィルムのCTEは38.5 ppm/Kを示す。 従来のビス(o-アミノフェノール)モノマーを用いた場合の値、57.7 ppm/Kと比較すると、その低CTE化に対する効果がわかる。また、ガラス転移温度も347℃極めて高い値を示し一部の目標特性を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、新規ビス(o-アミノフェノール)モノマーの合成に成功した。そして、そのモノマーを用いることでPHAの高い溶液加工性と、優れた誘電特性(低誘電正接化;低Df化)が期待できる低熱膨張性ポリベンゾオキサゾールフィルム(PBO)の合成も達成できた。2年目は、このモノマーから得られたPBOフィルムの詳細な物性評価を継続するとともに、モノマーの化学構造を系統的に変化させることも可能なためPBOの「化学構造」と「熱的特性、機械特性、そして誘電特性」の関連性を調査できる段階にも移行できると考える。よって、申請当初の研究計画にしたがって、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初の計画通り、低誘電正接化(低Df 化)の制御因子について調査する。そのために、初年度で合成に成功した新規ビス(o-アミノフェノール)モノマーの合成スキームをもとに、様々なジオール類を用いてエステル結合を介した新たなビス(o-アミノフェノール)を合成し、化学構造を系統的に変化させPBOの「一次構造や高次構造」と「熱的特性、機械特性、そして誘電特性」の関連性を調査する。そして、最終目標である「5G用絶縁材料の開発」につなげていく。
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