2022 Fiscal Year Research-status Report
金属水素化物による低温還元を利用した高磁気異方性ナノ磁性粉末材料の開発
Project/Area Number |
21K04704
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 章宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20358047)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金属水素化物 / 低温還元 / 高磁気異方性 / 磁性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
FeNiはL10構造を有する金属間化合物である。L10-FeNiは高磁気異方性を有し、希少金属レスで耐熱性に優れるため、実使用温度域においてNd-Fe-B磁石に匹敵する性能を有する次世代の高性能磁石として期待されている。しかし、L10-FeNiは320℃以下でのみ安定に存在する物質であるため、拡散速度が極めて遅く、通常の手法では合成が困難であった。本研究では、湿式法により合成したFe-Ni前駆体粉(酸化物等)に対して、強力な還元力を有する“金属水素化物による低温還元技術”を利用して、規則相として安定な上限温度以下で十分な拡散現象を確保しつつ、高い規則度を有するL10-FeNiの実現を目指して行うものである。 令和4年度は、塩化物溶液混合と真空乾燥による前駆体粉の合成を行い、得られた合成粉に対して金属水素化物を用いて300℃にて還元処理し、その特性評価を行った。前駆体粉の構成相は塩化物溶液の撹拌温度・時間の影響を受けて変化した。得られた還元粉はいずれもfcc相を主相として少量のbcc相を含んでいた。X線回折により構造解析したところ、L10を示す明瞭な回折ピークは観察されず、保磁力も200~250[Oe]程度しか得られなかった。Fe-Ni-M(M:金属)状態図に基づいてL10構造を安定化する可能性を有すると予想される元素の添加を試みたところ、保磁力が改善される傾向を示す複数の添加元素を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、令和3年度に行う予定であった「元素添加によるL10構造の安定化の検討」を進めることができた。いくつかの元素添加により保磁力が改善される傾向を示すことが見いだされたので、令和5年度も引き続き範囲を広げて検討したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、主として以下の項目を検討する。 (1)L10構造の安定化に与える元素添加の効果の検討 Fe系およびNi系状態図を利用して、L10構造を安定化させる可能性を有する元素を抽出し、引き続き添加を検討する。 (2)磁場中還元の可能性の検討 中和滴定あるいはFe-Ni塩化物合成などの手法を用いて、前駆体粉ではナノレベルでの均質分布の実現可能性が見いだされたものの、金属水素化物還元によって得られる還元粉中にはL10規則相が生成しているエビデンスは得られなかった、R5年度は、外部磁場を与えた状況で金属水素化物還元を行い、L10規則相が生成する可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
<当該助成金が生じた状況>令和4年度は、世界的な半導体不足により、一部の研究項目で計画していた機器(真空コントローラ)を購入することができなかった(約20万円)。これにより、当該助成金が生じた。 <翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画> (1)ナノ・原子レベルでのFeとNiの均質分布の効果の検討(当該助成金に該当)・・・令和4年度に検討した新手法に関して、真空コントローラを購入してより精緻にプロセス制御することにより、目的とする前駆体粉を合成する手法を検討する。(2) L10構造の安定化に与える元素添加と磁場中還元の効果の検討・・・令和5年度の研究項目として、当初の計画どおりに行う。
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