2021 Fiscal Year Research-status Report
方向性電磁鋼板へのガリウム浸透による高性能磁歪合金の開発
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21K04707
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川又 透 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90638355)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁歪材料 / 方向性電磁鋼板 / FeGa合金 / 環境発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、電析メッキにより電磁鋼板試料にガリウムを均一に析出させることに成功した。作製したガリウムメッキ電磁鋼板試料を適切な条件で加熱することにより、目的としていたGa18at%近傍の合金組織を得ることに成功した。ガリウム浸透電磁鋼板試料の蛍光EXAFS(X線吸収微細構造)測定から、加熱によって電磁鋼板組織中に浸透したGaはbcc構造のFeと置換しており、予想通りbcc構造を保ったFe-Ga合金が得られることが明らかとなった。また、U字型振動発電デバイスを用いたガリウム浸透電磁鋼板試料の振動発電試験を行い、ガリウム浸透電磁鋼板試料はガリウム未浸透の電磁鋼板試料に比べて高い発生電圧をしめすことを実証した。一方で、力学特性を評価するため比較的大型のガリウム浸透電磁鋼板試料を作製したところ、熱処理の過程で薄板上の電磁鋼板がひずみを生じることが明らかとなった。この現象は残留応力の解放に伴う変形と考えており、磁区構造観察や振動発電試験の妨げになるため、次年度以降、熱処理時の機械的拘束などの手法を導入することにより解決したいと考えている。現在作製しているガリウム浸透電磁鋼板試料は数十時間の熱処理後も厚み方向に濃度差を示すことがSEM-EDX(エネルギー分散型X線分光法)によって確認された。磁歪特性をさらに向上させるためには、磁歪定数が最大となるガリウム濃度(Fe-Ga18at%)に試料を調整する必要があることから、均質化処理をさらに短時間で行うため、圧延による結晶粒微細化など新たな手法開発を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な課題であったガリウム浸透電磁鋼板試料の安定供給に関しては、塩化ガリウム溶液を用いた電析メッキ手法を開発することで解決している。メッキ浴として用いる塩化ガリウム溶液は、ガリウム金属と塩酸から容易に作製することが可能であり、作製プロセスの低コスト化に寄与する。また作製した合金試料が未処理の電磁鋼板に対して大きな発生電圧を示すことを実証実験から明らかにしている。本手法で作製したガリウム浸透電磁鋼板試料を対象に、国内の放射光施設を用いた蛍光EXAFS測定を実施し、ガリウム元素がbcc-Feとの置換型固溶体を形成していることを確認している。以上の成果から、当初の研究計画は概ね達成できていると考えている。一方、現在作製しているガリウム浸透電磁鋼板試料は数十時間の熱処理後も厚み方向に濃度差を示すことがSEM-EDX(エネルギー分散型X線分光法)によって確認されている。従って均質化処理をさらに短時間で行うための新たな手法開発が必要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、計画通り磁区構造観察を含めたガリウム浸透電磁鋼板試料の磁気特性評価(磁化曲線,磁歪定数測定等)を行う予定である。磁区構造観察に用いるKerr効果顕微鏡には、低倍率レンズを本年度の予算で導入しており、マクロスケールでの応力-磁区構造相互作用のリアルタイム観察が可能となる予定である。一方、当初想定していたよりも熱処理に伴う電磁鋼板試料の変形が大きく、磁気特性評価の妨げとなることが予想されるため、熱処理時の機械的拘束などの手法を新たに導入することにより対処する予定である。また磁歪特性をさらに向上させるためには、磁歪定数が最大となるガリウム濃度(Fe-Ga18at%)に試料を調整する必要があることから、均質化処理をさらに短時間で行うための新たな手法開発を行う予定である。
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Causes of Carryover |
電析メッキの実験が当初の予定よりスムーズに進行したためガリウム金属の購入費が低額に収まり、その分の次年度使用額が生じた。次年度以降、電磁鋼板試料やコイルなど、その他の消耗品購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)