2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04713
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
見山 克己 北海道科学大学, 工学部, 教授 (70540186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 隆之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 工業試験場, 主査 (20469703)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノインプリント / プリント配線板 / 半導体 / 微細配線 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は「インプリント加工性におよぼす樹脂物性の影響と適正条件の探索」を中心に実施した。基材候補材料としてはプリント配線板に適し,かつ熱ナノインプリントを適用可能な熱可塑性樹脂として熱可塑性ポリアミド,シクロオレフィンポリマー(COP),ポリフェニレンサルファイド(PPS)の3種類を候補として選定し、成形条件の検討を行った。なおモールドはSi材の市販のテスト用櫛歯形状モールドを使用し,樹脂基材に微細な溝(トレンチ)を形成した。 インプリント条件を検討するにあたっては,COPとPPSについては熱分析(粘弾性測定(DMA)と示差走査熱測定(DTA))を用いて粘弾性挙動とガラス転移温度(Tg)を測定し,樹脂が軟化する温度領域を推定してインプリント温度決定の参考とした。ポリアミド材は250°Cを超えると材料の収縮が起こることが知られているため,成形温度250°C程度を目安として実験を行ったが,十分なトレンチ形成はできなかった。COPの熱分析の結果Tgは160℃程度と推定されたので,これをもとに180°C/1200Nの成形条件で1μm幅のトレンチを形成できることが確認できた。PPSについては板材に加工する射出成形温度を2水準変化させ,異なる熱物性を有する基材を準備した。射出成形60℃の基材は結晶化していないため120℃程度に冷結晶化点を有し,この温度領域で粘弾性が急激に低下する(軟化する)ことがわかった。この基材に対して120℃/2000Nの条件でインプリントを行ったところトレンチの形成が確認でき,粘弾性挙動の測定結果と良い一致を見た。一方射出成形130℃の基材では結晶化が進んでいるため冷結晶化点は発現せず粘弾性が低下する温度領域が見られないため,融点近傍でインプリントを試みた。250℃/2000Nでトレンチの形成が確認できたものの,トレンチ深さについては十分な加工に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は研究課題としてあげた4項目のうち,「インプリント加工性におよぼす樹脂物性の影響と適正条件の探索」と「インプリント加工条件の確立」について取り組み,概ね予定通りの進捗であった。特に熱分析測定で得られた物性値とインプリント成形性に因果関係を見出したことは大きな成果と考えている。この手法については令和4年度も引き続き踏襲し,粘弾性挙動とインプリント成形性の関連について考察していく。特にPPSの非結晶化材料における冷結晶化点近傍の粘弾性低下を利用するインプリント加工は,低温で加工できることに加えて,その後の加熱による結晶化により材料の高温安定性を向上させることができる。加工条件については,より適正な条件を確立すべく,温度・圧力などの条件を調整していく。「モールドの材質と加工手段がトレンチ形成に及ぼす影響の解明」については情報収集を開始した。現在はSiモールドを使用しているが,電鋳の金属モールドの可能性を検討した。電鋳の場合は母型が必要となるが,この母型にMEMS加工したSiを使用する。本研究で目指すサブミクロンオーダーのモールドの場合は電鋳後離型する際に母型Siを化学的に溶解する必要があることが判明,コストの面から現実的ではないため電鋳モールドの利用は計画から除外することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
トレンチ断面観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ,トレンチ開口部のコーナーがR形状を呈しておりモールドに完全には追従していないと判断された。このため矩形形状を実現するようインプリント条件を調整する必要がある。引き続き、PPS材を用いて温度と圧力の調整を行う。前述の通り射出成形60℃の材料は非結晶化材なので100℃前後の冷結晶化点(ガラス転移温度)を利用した低温成形について条件を確立するとともに,工法の知財化を検討する。射出成形温度130℃の材料は250℃以上で成形する必要があるが、その場合、基材変形が無視できなくなるので,ガラス繊維や無機フィラーで強化した材料の適用を検討する。 また研究課題「モールドの材質と加工手段がトレンチ形成に及ぼす影響の解明」および「インプリントで形成した溝(トレンチ)への金属充填手法」の確立について令和4年度より本格的に着手する。モールドの材質と加工手段については,Siのドライエッチングプロセスについて福岡県の三次元半導体研究センターに設置のオープンラボを利用する予定なので,加工手法や条件について半導体研究センターの助言を得ながら検討を進める。令和4年度は基礎的検討を行い,実際のSiモールド加工は令和5年度の予定である。トレンチへの金属充填手法については,プリント配線板用の銅めっきを適用予定である。絶縁体である樹脂上へのめっきなので,無電解の化学銅めっき薄膜を析出させた後に電解銅めっきでトレンチを充填する。この際,化学銅めっき層の密着確保のための基材前処理条件や電解めっきにおける電流密度や浴組成が鍵になると考えられるので,これらを中心に検討を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため,申請時に予定していた学会等の出張が大きく減少したことと福岡県三次元半導体研究センターの利用実績がなかったため次年度使用額が発生した。これらは令和4年度および令和5年度に時期を変更して実施する。
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