2023 Fiscal Year Annual Research Report
超高速広角レーザースキャナーに向けた新電気光学結晶の研究
Project/Area Number |
21K04714
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
今井 欽之 京都先端科学大学, 工学部, 教授 (70566695)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | KTN / 電気光学効果 / 誘電特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
KTa1-xNbxO3 (KTN)結晶の電気光学効果(電界印加で屈折率が変化する現象)を用いた光偏光器(光線の向きを変えるデバイス)は、従来のデバイスよりも圧倒的に高速であり、レーザー加工を革新的に高性能化する可能性を秘めている。問題は偏向角が10度程度までと、数10度に及ぶ他のデバイスに見劣りしていることで、抜本的な改善にはKTNでの屈折率変化量Δnの飛躍的増大が必要である。本研究では、電界印加時にKTNに誘起される分極を増大させるべく、誘電特性の検討を行った。前年度までに、本補助事業でいただいた経費を用いてKTN結晶試料を準備し、試料蓄積電荷計測系を立ち上げた。この最終年度は、KTN結晶のLi濃度の違いによる誘電特性の変化を検討した。 低電界では、分極は誘電率に比例する。市販のKTN結晶の多くは、単結晶育成の都合で少量のLiが添加されている(KLTNと呼ぶ)。このLiは結晶中のKの一部を置き換え、結晶の誘電率が変化するとされている。今年度の測定により、純粋なKTNでは、KLTNに比べて格段に高い誘電率が得られ、大きな分極が得られることが示唆された。ただし、KTNに特定の電界を印加すると相転移が起こり、分極はこの誘電率から算出される値を超えて増大する。この現象は、KLTNについて報告されたものであるが、今年度、純粋なKTNでもKLTNと同様に電界に誘発された相転移が起こり、分極が急増することが確認された。純粋なKTNで、低電界での誘電率の高さと合わせ、Δnの改善が可能であることを示唆する結果である。しかし、今回用いた純粋なKTN結晶は、電界印加で結晶中に電子が注入されて電界が乱され、誘電特性を精度よく測定するまでには至らなかった。 今年度で本補助事業による研究は終了となるが、報告者の研究室では、正確な誘電特性の測定とそこからの高い分極の実現に向けて研究を継続する。
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