2021 Fiscal Year Research-status Report
擬平面ひずみ変形加工により発現した結晶方位の熱的安定性と高温変形特性に関する研究
Project/Area Number |
21K04719
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Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
兼子 毅 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 准教授 (30403140)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 圧延加工 / 塑性加工 / 集合組織 / 高温変形 / ひずみ経路 / 有限要素法解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属材料のうち板材などの素形材製造技術の一つである圧延加工では伸長した結晶粒が薄く延伸した圧延板内部に多数形成され,その後の熱処理によって結晶粒は再結晶粒としてパンケーキ状に変化することが多い.本研究課題では,塑性変形を受けた結晶粒の長さ/幅の比率を自在に変化できるような板幅方向にも材料流動が生じるような擬平面ひずみ変形圧延加工法を開発し,その圧延加工法を用いて加工された金属材料の結晶方向(結晶方位)や結晶粒の形状,その後の熱処理による結晶方位変化や高温中の変形挙動について調査することで,新加工プロセスの妥当性検証を行うことを目的としている. 研究初年度(2021年度)は擬平面ひずみ変形圧延加工の開発として以下の課題を設定し,研究を実施した. 1.部分圧延を利用した擬平面ひずみ変形圧延加工時の有限要素法解析を行い,圧延ロールの工具形状や加工回数プロセス因子による材料流動や応力・ひずみ分布などの変形特性の評価. 2.有限要素法解析にて最適な材料流動が期待できる圧延ロールの設計・製作. 市販の3次元有限要素法解析ソフトウェアを用いて,3次元CADで作成した種々のロール形状を有する圧延ロールによる擬平面ひずみ変形圧延加工時の材料流動や応力・ひずみ分布を調査した.その際,ロール断面形状を1)ロール等胴長方向に三角形溝を連続配置したロール,(2)円形凹型溝が連続配置されたロール,(3)円形凸部が連続配置された溝ロールとして加工解析を行なった.その結果,ロール形状により板幅断面での相当ひずみ分布を自在に変化できるが,板幅方向への材料流動をより多く促進させるには,ロール形状の検討が必要であることがわかった.改めて加工解析を進め,解析結果から最適条件を抽出し,今後の圧延ロールの設計・製作にフィードバックさせることにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で提唱する擬平面ひずみ変形圧延加工は異形形状を持つ圧延ロールによる部分圧延と平坦化圧延の2段階の加工プロセスから構成される.研究初年度は,市販の有限要素法加工解析ソフトウェアSimufact Forming 2021を導入し,異形形状を有する圧延ロールを用いて圧延加工解析を行い,初年度目標である加工プロセス中の材料流動や応力・ひずみ分布解析を行なった.圧延ロール形状は所属機関所有の実験用小型2段圧延機に適合するようにロール直径50mm,ロール胴長70mmのロールを3D CADにてモデリングした.ロール形状は(1)ロール等胴長方向に三角形溝を連続配置したロール,(2)円形凹型溝が連続配置されたロール,(3)円形凸部が連続配置された溝ロールを解析対象とし,加工解析を行なった.初期板厚1.2mmあるいは2.0mmの純アルミニウム板材を用いた.要素形状は四面体要素とし,圧延方向のパスラインについて対称となる1/2モデルとして1回の圧延により板厚減少率(圧下率30%から40%)の条件で3次元有限要素法解析を行なった.ロール断面形状(1)では部分圧延領域が狭く,かつ未圧延部分が溝部へのメタルフローが促進されるが,続く平坦化圧延にて実験用圧延機荷重容量を超える圧延荷重の増大(30kN)を確認した.ロール断面形状(2)ロール断面形状(3)を上下ロールした際にはコルゲート状の波板が得られるが総じて相当ひずみが約0.6程度であり,続く平坦化工程での幅広がりも小さく,ロール形状の検討が必要であることが判明した.研究初年度の目標設定の項目である「有限要素法解析にて最適な材料流動が期待できる圧延ロールを設計・製作する.」については,加工解析でのロール形状の見直し・再解析を行ったのちに研究2年度目に圧延ロールを設計・製作することとしている.このため,当初計画より進展が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年度は,研究初年度で有限要素法解析により得られた最良の材料流動や応力・ひずみ分布を示すロール形状を持つ圧延ロールを製作し,モデル材として純アルミニウム板とAl-Mg系アルミニウム合金(いずれも焼鈍板)を用いた圧延実験を実施する.その際に,被加工材板幅/板厚のアスペクト比の違いによる材料流動への影響の調査や擬平面ひずみ変形圧延加工を圧延板の表裏に施すなどの加工パターンを変化させることを試みる.得られた圧延材について圧延方向断面と板幅方向断面について光学微視組織観察とSEM/EBSD測定による結晶方位評価(IPFマップ,KAM(Kernel Average Misorientation)値計測)を行い,有限要素法解析によるひずみ分布との対応を調査する.また,高温引張試験用の器材として後述の引張試験機にて使用可能な高温引張試験片つかみ具などを設計・製作を行い,高温引張試験の予備実験などを行い,研究3年度目に目標とする実験項目(擬平面ひずみ変形圧延加工材の高温引張特性と結晶方位評価の深度化)に繋げる. なお,研究計画調書における「結晶方位評価の実施」ならびに「学内保有設備を活用して高温引張試験」の各項目については,研究初年度に所属機関においてEBSD測定が可能な電界放出型電子銃走査電子顕微鏡と高温引張試験加熱炉を備えた精密材料試験機が導入されたため,研究計画書にて当初予定していた学外研究機関での実験実施の必要性は無くなり,所属機関内での実験が可能になった.
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Causes of Carryover |
研究計画調書にて研究初年度は市販の有限要素法解析ソフトウェア購入費,圧延ロール製作費とその他消耗品費を計上していたが,有限要素法解析ソフトウェア(年間保守契約含む)と解析用ワークステーション購入費に際して初年度配分研究費の94%ほどを占めたため,計画を変更して初年度には圧延ロール製作を実施せず,次年度使用額を研究2年度の圧延ロール製作費に充当することにした.また,Covid-19感染症拡大による県外移動自粛要請が所属研究機関にてあったため,旅費・謝金等の使用はなかった.
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