2023 Fiscal Year Annual Research Report
鋼板上に形成した酸化膜の熱浸透率の高温測定と鋼板冷却の沸騰現象に対する理解
Project/Area Number |
21K04735
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 理恵 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (00372459)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱拡散率 / 熱伝導率 / フラッシュ法 / Fe2O3 / 酸化スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Fe2O3スケールの熱伝導率の温度依存性を明らかにすることを目的とし、Fe2O3スケールの熱拡散率を測定した。厚さ0.5mmの鉄板を空気中で850℃に保持し、十分に酸化させて、全体をFe2O3単相とした。酸化後の試料厚さは約1 mmとなった。この試料の熱拡散率をキセノンフラッシュ法により室温~500℃の温度範囲で測定し、熱伝導率を求めた。Fe2O3スケールの熱拡散率は室温において4 x 10^(-7) m^2/sであり、温度上昇とともに低下した。熱伝導率も同様に負の温度依存性を示した。室温における熱拡散率は、AkiyamaらのFe2O3焼結体に対する値に近かったが、その他の報告値および遠藤らの報告値よりも1桁小さかった。この要因を調査するために、Fe2O3スケールの断面(破断面)組織を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。Fe2O3スケールは試料厚さ方向に対して2枚に分かれており、さらに、それぞれが2つの層から成っていた。つまり、気相に接していた面は結晶粒が細かく、試料の内側は、気相に向かって粒が大きく成長していた。粒が細かい部分は粒界による熱抵抗が大きくなるため、結果として熱拡散率が小さくなると考えられる。遠藤らの測定では、Fe2O3スケールの表面を研磨したものを試料としていたため、Fe2O3粒が大きく、熱拡散率は大きくなったと考えられる。 実際の鋼板においては、表面に生成するFe2O3スケールの粒は小さいことが報告されている。酸化スケールのFe2O3の存在割合は1%と少ないが、Fe2O3は再表面に存在すること、その熱抵抗が大きいことを考慮すると、Fe2O3スケールの鋼の冷却速度に対する影響は大きいと考えられる。
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