2022 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素からのメタノール合成の低圧化を目指した脱水用炭素膜の開発
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21K04751
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
熊切 泉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20618805)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膜分離 / 脱水膜 / 炭素膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素膜の支持体に水処理用に市販されているセラミック管を用いている。市販品そのままでは孔径が大きく、炭素薄膜を形成できない為、支持体表面を修飾して用いる。修飾条件や、炭素膜の前駆体溶液の作成、前駆体の支持体への塗布条件を検討し、炭素膜の製膜の再現性を向上した。従来の30㎜長さから、150㎜長さまでのスケールアップも行った。 合成条件、特に、前駆体の焼成温度が形成する炭素膜の透過性能に与える影響を検討した。焼成温度を制御することで、90%t-ブタノール/10%水の混合溶液から、99%以上の濃度で水を透過する炭素膜を得た。この結果は、炭素膜中にt-ブタノール分子サイズ(約0.6nm)よりも大きな貫通孔がないことを示している。また、単成分のガス透過試験も行った。Heや窒素ガスは、透過温度の上昇に伴い透過量が増える活性化拡散を示した。活性化エネルギーは窒素ガスの方がHeガスよりも大きかった。これらの結果も、炭素膜中の孔径が分子径に近いこと、大きな欠陥がほぼないことを示している。これらの試験から、汎用支持体を用いても、焼成条件の調整により水選択性の炭素膜が得られることが分かった。また、水の透過量は、透過温度にほぼ比例して増加した。 サラゴサ大学の支援を受けて、脱水能を持つ炭素膜を二酸化炭素からのメタノール合成へ適用することを試みた。この反応では膜を介して水を反応場から除去することで転化率が向上するが、そのためには、水/メタノール、二酸化炭素、水素の分離性が必要である。反応温度での膜の劣化は見られず、同条件で非晶質化して性能が劣化してしまったA型ゼオライト膜よりも耐久性が高いことがわかった。一方、水の選択性は不十分で、さらなる水選択性の向上が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素膜を異なる条件で製膜し、脱水性能に与える影響を検討した。水透過に与える温度の影響を検討した。メタノール合成条件での試験も行った。これらから、膜の耐久性の知見や膜改良の指針を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
透過性の向上や選択性の向上を目指して、膜の合成条件の改良や、膜の表面修飾を行う。膜の構造分析も行い、製膜条件、膜構造、脱水性能の関連を明らかにする。
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Causes of Carryover |
真空計の納期が8ヶ月以上と長く年度内に購入できない為、装置構成を見直すこととし、購入を見送った。コロナ禍で、学会がオンラインとなったり、海外(スペイン)の共同研究大学への訪問予定を取りやめた。2023年度に共同研究先を訪問し、実験の打ち合わせなどを行う予定である。2023年7月の国際学会への登録費用の支払いを2022年度(予定)から、2023年度の支払いとした。これらの変更に伴い、一部の予算を2023年度に繰り越した。
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