2023 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素からのメタノール合成の低圧化を目指した脱水用炭素膜の開発
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21K04751
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
熊切 泉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20618805)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 炭素膜 / 脱水 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼオライト膜を膜反応器として用い、反応で副生する水をその場で除くと転化率の向上や反応圧力の低下ができるなどの利点が得られることが様々報告されている。新しい脱水膜として、本研究では炭素膜の脱水性能、特に水透過性の向上を目指し、炭素膜に鉄や親水性なナノ多孔質フィラーを添加することを試みた。酢酸鉄や異なる種類のミクロメーターサイズのゼオライト粉末、それらを粉砕しサブミクロンサイズにしたゼオライトを混入した前駆体を用いて、炭素膜をセラミック支持体上に製膜した。また、合成後の膜修飾も行った。フィラーの添加量や前駆体塗布条件、前駆体の炭化条件を調整することで、大きな欠陥がなく分離性を示す膜が得られた。一方、水の透過性は半分以下に減少した。無機ガスの透過性も低下した。添加したフィラーの量は1%以下と小さく、添加物による透過阻害は考えにくい。添加物が前駆体を架橋するなどして前駆体構造を緻密化したり、前駆体の炭化過程が変化して、炭素膜をより緻密化した可能性があるが詳細は分かっていない。 水透過流束が約1kg/(m2h)程度の炭素膜を再現性良く製膜する条件が得られた。これらの膜はt-ブタノール(動的分子径0.6nm)を殆ど透過せず、大きな欠陥がないと考えられる。同じ支持体上に製膜したA型ゼオライト膜と同程度の透過流束だが、水/エタノール(動的分子径0.45nm)分離性はA型膜には及ばなかった。エタノールが透過できる孔が多いことに加えて、A型ゼオライト膜に比べて親水性が劣る為であると推測された。 炭素膜は酸(pH3)やアルカリ(pH10)溶液に浸漬した前後でも、脱水性能に大きな変化は見られなかった。同様の条件で非晶質化し脱水性能劣化したA型ゼオライト膜と比べて、酸やアルカリ耐性が高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱水性能の向上を目指して、前駆体へのフィラー添加や、製膜後の表面修飾で試みた。想定した効果は得られなかったが、炭素膜の形成に関する新しい知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
膜性能に与える因子は、前駆体や用いる溶媒の種類や濃度、フィラーの種類やサイズ、量、焼成条件に始まり極めて多く存在する。機械学習なども取り入れて、大きな影響因子を洗い出し効果的に検討すると効率的な開発ができると思われる。一方、高い水/t-ブタノール選択性を示す炭素膜が再現性良く得られる条件を得た。また、炭素膜の耐久性の情報も得られたので、ゼオライト膜の展開が難しい分野への展開する。
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Causes of Carryover |
従来行っていた合成条件(高価な複層支持体(現在は販売停止で在庫なし)、クリーンルームでの製膜、THF溶媒、特殊な高速焼成炉)を、より実用化しやすいと考えられる条件(市販されている単層支持体、一般の実験室、グリーンな溶媒、電気炉)に変更し同等の炭素膜が得られる条件を見出したが、試行錯誤に多くの時間がかかり、成果をまとめる時間が限られてしまった。本研究で得た成果をまとめるために分析などの追加試験や、成果を学会(膜学会2024年6月11-12日東京、International Symposium on Zeolite and MicroPorous Crystals ZMPC2024、2024年7月21-25日大阪)などで発表するための旅費、学会登録費、印刷費等、と、今後の展開の議論調査を行うための旅費や印刷費等として使用する。
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